「2000年代頃から現在までは第4次焼き芋ブームが起きています。要因としては、サツマイモを均一、かつ、おいしく焼ける電気式オーブンの開発と、それによってスーパーなど固定店舗での販売が一般化したこと。また、それまでの『ホクホク系』に対し、安納芋やべにはるかを代表とする『ねっとり系』の品種が登場し、現代人の嗜好(しこう)に合ったのだと思います。さらに、サツマイモは一定期間貯蔵することで甘みが増しますが、そうした糖度を高めたサツマイモをコンスタントに出荷できる設備や技術が浸透してきたこともブームの要因でしょう」

 こうしてファンが増え、比例して店舗も増えていくという好循環が起きているのだ。

焼き芋と大学芋は安定収益
干し芋はハイリスク

 増加するサツマイモ専門店の中でも、目立つのは焼き芋や大学芋など“伝統的”な商品をメインにしている店舗。その理由を橋本氏はこう述べる。

「スイーツは当たり外れ、はやり廃りがありますが、焼き芋や大学芋、干し芋などは根強いファンがいて、定期的にお客さんが買いに来ます。そのようなファンや固定客をつかみ、コンスタントに商品が回るようになれば、安定的なもうけになるのです。あるサツマイモ専門店の社長は『サツマイモを扱っていて倒産した会社はない』と話していたほどなので、安定的な収益が見込めるのでしょう」

 ただし、素人がやおら店を構えることは難しいという。設備はそろえることはできるが、問題は芋の仕入れだ。

「例えば焼き芋を焼く際は品種によって多少焼き加減を調整した方が良いですが、そこまで高度な技術は必要ありません。それよりも重要なのは、いかに質の良いサツマイモを安定的に仕入れるか。そのためには、長く続いている焼き芋店などに、いわば弟子入りして、仕入れルートを紹介してもらうと始めやすいです。仕入れや品種ごとの特徴を学び、独立、のれん分けされる人が少なくないです」

 橋本氏のもとにも独立や開業したいという相談が複数寄せられるが、やはり仕入れルートの重要性を真っ先に伝えるという。また、主力商品についてのアドバイスも行う。

「干し芋生産をやりたがる人もいますが、実は干し芋は1kgの芋から200gほどしかできず、剥いた皮など食品残渣(ざんさ)も多く発生します。その分、コストも高くなりますし、食品衛生の観点からも取扱いが難しくなる一方なので、新規参入者にはおすすめしません。それよりは、焼き芋やサツマイモチップスなど無駄の少ない商品の生産をすすめていますね」