ハーバード大教授が絶賛する和製スタートアップの強み、ラクスルのケーススタディで解説Photo:PIXTA

ハーバードビジネススクールで近年、日本のスタートアップ企業を研究対象としているコミナーズ教授。日本のスタートアップ企業にある強みと、今後伸びていくと見ている日本企業と業界について語ってもらった。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

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日本のスタートアップ企業にある
三つの強み

佐藤智恵 コミナーズ教授は2022年、35歳の若さでハーバードビジネススクールの教授に就任され、世界のビジネススクールの40歳未満の教員の中でもトップクラスの研究業績を持つことで知られています。最先端の経済学「マーケットデザイン」を研究するコミナーズ教授の目から見て、日本のスタートアップ企業のどのような点が興味深いのでしょうか。

スコット・デューク・コミナーズ これまで多くのスタートアップ企業を研究してきましたが、日本のマーケットプレイス(売り手と買い手が自由に参加できるインターネット上の取引市場)の独創性には驚かされるばかりです。教材に取り上げたエニグモ、ラクスル、スペースマーケットの3社を含め、日本のスタートアップ企業には共通して次の三つの強みがあると感じています。

(1)創造性
(2)既存のサプライヤーの能力を引き出すネットワークの構築力
(3)インセンティブ・アラインメント(運営会社とユーザーの利害が一致するようなプラットフォームを提供していること)

 これら三つの要素は、いずれもスタートアップ企業が成功するために不可欠な要素ですが、中でも(2)は日本発のマーケットプレイスの大きな強みだと思います。

 ゼロからサプライヤーを探して、サプライヤー網を築くのではなく、既存のサプライヤーを再編し、サプライヤー網を効率化することによって、運営会社もサプライヤーも利益を得られるような取引市場をつくっていく――。この新しいネットワークの構築力が見事なのです。

佐藤 三つの強みについて、もう少し具体的にご説明していただけますか。

コミナーズ ラクスルの事例でご説明しましょう。