ひと目見て、よもや紙だけでできているとは思えない繊細な構造と高級感に驚かされる。しかも耐水・耐熱・耐油・冷凍・電子レンジ対応の高機能設計で、使用後は折り畳んで廃棄が可能。紙の印刷のプロが生んだ弁当箱を中心とするフードパッケージが、エコ意識の高まりや、コロナ禍のテイクアウト需要増を受け、人気を集めている。北海道栗山町の山東印刷が提供する「紙の折箱」シリーズだ。(取材・文/大沢玲子)
同社は1953年創業。当初は封筒・はがき印刷、商店街のチラシや自治体の広報誌作成など、地元を中心に幅広い印刷ニーズに応えてきた。
しかし、2代目として三十数年前より代表取締役を務める宇田哲氏は、「10年前ぐらいから従来の印刷業務だけでは会社は立ち行かなくなると予期し、新規事業を模索し始めました」と明かす。
そこで着目したのが紙製パッケージだ。他社にはまねできない機能性と見た目にも徹底してこだわり、「のりを使わず、1枚の紙だけで簡単に組み立てられるエコ設計を実現するべく、数多くの試作品を作りました」(宇田氏)。炊いたご飯を入れて撥水性を試したり、レンジで加熱したりと、研究開発、試作を重ねること約7年。満足のいく「折箱」が完成する。
まねのできない機能性と
折り曲げ構造で特許を取得
最も難関だったのが大本となる形状(型紙)の作成だった。箱の外側・角を5mmの額縁・三角折り設計でコンパクトながら堅牢性を担保し、水漏れを防止。ラミネート加工で防水性を実現している。
何といっても画期的なのは折り紙のように、1枚の紙を組み立てるだけで外箱、中箱が完成し、燃えるゴミとして処理できるため手軽だ。高級感ある黒や金色を基調に、ふたや中箱、仕切りパーツの組み合わせ、デザイン・カラーのバリエーションもラインナップ。店のロゴを箱に印刷するなど顧客の細かいニーズに対応できるのも印刷会社ならではだ。設計構造については特許を取得している。