日本人がこじらせた「員数主義」

 いろいろなご意見があるだろうが、筆者は日本人の「員数主義」をこじらせた結果だと考えている。

「員数主義」というのは簡単に言えば、「とにかく数字の帳尻さえ合うのであればどんなことをしてもいい、それが多少モラルを欠いたことでも問題ない」という考え方だ。

 コンビニも土産物屋もなぜ「上げ底」をするのかというと、そっちの方が売れるからだ。中身に合わせた形で容器を小さくしたりすると売れない。かといって、大きな器に見合うように中身を増やすには値上げをしなくてはいけないので、やっぱり売れない。

 つまり、想定している利益、売り上げをキープできるように、「粉飾」の一環として、「上げ底」をしているのだ。

 そこにあるのは、消費者の嗜好とか企業のモラルとかは一切関係ない、企業内の売り上げの計算が想定していた予算通りに達成できるのかという視点のみだ。社会からどう見られるとか、顧客の信頼がどうとかという発想はなく、組織内の数字の論理しかない。これが「員数主義」だ。

 筆者はこれまで報道対策アドバイザーとして、不祥事企業を間近に見る機会が多くあったが、データ改ざんなどの不正の現場で「員数主義」には何度もお目にかかった。謝罪会見の説明資料をつくるために、不正をした人々に原因を聞くと、「数字を合わせるため」という回答が返ってくることが圧倒的に多い。数字を合わせるためには、多少汚いことをするのは「必要悪」だというモラルの壊れっぷりなのだ。

 しかし、実際にその人の働きぶりや人柄を見ると、「悪人」ではない。むしろ、会社に忠誠を誓い、我が身を粉にして働く、典型的な「マジメな日本人」なのだ。

 この不可解な現象はなんだろうと考えてモヤモヤしていた時、評論家の山本七平氏の『一下級将校の見た帝国陸軍』(文春文庫)を読んで、「ああ、これか」とパッと目の前がひらけた。それが「員数主義」だ。