電子型返礼品は他社も導入しやすい
このスキームは営業力さえあれば他社もすぐに導入できるだろう。そもそも電子ポイントで返礼品を受け取る仕組みを先に進めていたのは、ふるさとチョイスの「ふるさと納税払い チョイスPay」(旧・ふるさとチョイス電子感謝券)だった。
こちらも寄付からタイムレスで支払いに使えるポイントが受け取れ、スマホアプリでQRコードを読み取ることで対象の店で支払いができる。現地だけでなく、都市部のアンテナショップや自治体主催の物産展などでも利用可能だ。
つまりは、電子決済アプリを持っている事業者なら、同じ仕組みを導入するのはたやすい。ふるさと納税ポータルサイトを持っている楽天やauPAYなども遠からず追随してくるだろう。来年あたりは、この電子商品券花盛りになるのではないか。
なお記者発表の場では、さとふる以外のサイトにもPayPay商品券を提供することについて否定はしていなかった。ふるさと納税を舞台に、苛烈な陣取り合戦が始まりそうな予感がする。
ふるさと納税の理想と現実
ふるさと納税の理念とは、自分が応援したい自治体に寄付をし、その寄付金を地域振興のために役立ててほしいというものだ。
しかし、現実はネットショッピング感覚で、自治体そのものより魅力ある返礼品に目が向いている。特に今年は食品高騰の影響もあって、ぜいたく品よりも長期保存が可能な普段使いのレトルト食品なども人気が出るのではないだろうか。
もし今後、「PayPay商品券」の類似サービスが増えれば、地場産品よりもスマホ決済に使えるこちらを選ぶ人も増えそうだ。対象自治体が使える店舗や施設を選定する「建前」だが、そのハードルは緩いものになるだろう。自治体としては現地に足を運んでもらい、そこで消費をしてもらうことが狙いなので、使える店は多ければ多い方がいいからだ。
もっと言うなら、この仕組みを東京や大阪の大都市圏の自治体で導入したとすると、どういう店が選ばれるのだろうか。大都市で使える店が多くなれば、ほとんど普通のスマホ決済残高と変わらないようにも思えるが、総務省は十分制度の趣旨に合っていると判断したのだろう。
「ふるさと納税」は、そもそも節税効果を打ち出してきた制度だが、小市民のわれわれにとって納める税金などたかが知れている。「PayPay商品券」で年末年始のレジャー費を節約したり、普段の食卓に上る食品を調達したりするのは立派な生活防衛術だ。国の制度はメリットがあるなら利用しない手はない。とにかく12月末までに忘れずに寄付を済ませよう。