行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱のうずに巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は丸井グループ、J. フロント リテイリング、三越伊勢丹ホールディングス、エイチ・ツー・オー・リテイリングの「百貨店」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
三越伊勢丹・H2Oでは
再び「お得意様」が増収に貢献
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の百貨店業界4社。対象期間は2022年5~9月の直近四半期(J. フロント リテイリングは22年6~8月期、その他3社は22年7~9月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・丸井グループ
増収率:3.5%(四半期の売上収益579億円)
・三越伊勢丹ホールディングス
増収率:22.0%(四半期の売上高1213億円)
・J. フロント リテイリング(大丸松坂屋、パルコ)
増収率:4.8%(四半期の売上収益872億円)
・エイチ・ツー・オー・リテイリング(阪急、阪神)
増収率:26.3%(四半期の売上高1551億円)
※高島屋は会計方針の変更に伴い、前年同期比増減率が非開示のため、掲載を見送った。
百貨店業界では、4社全てが増収となった。新型コロナウイルス感染拡大によって大打撃を受けた各社は、いずれも四半期増収率が2~4四半期連続でプラスとなった。大減収からの反動増の影響には注意が必要だが、復活の兆しが見え始めている。
中でも、三越伊勢丹ホールディングスとエイチ・ツー・オー・リテイリングは2割超の増収を果たした。
前四半期の記事『三越伊勢丹、H2O…コロナ大減収の百貨店で「希望の光」の消費トレンドとは』でも紹介した通り、2社の好調の背景には、優良顧客による高額商品の需要増がある。
いわば“お得意様”がコロナ禍からの復活に一役買っているわけだが、その貢献度はどれほどすさまじかったのか。
次ページでは三越伊勢丹ホールディングスを中心に、その実態を詳しく解説する。