老後資産のための投資として注目されるESG
あぶり出される企業の本来の価値

 実は、ESG投資が世の中に広まる以前から、よく似た考えの資産運用が実践されていました。それがSRIと呼ばれるものです。SRIは、Socially Responsible Investmentの略称で、日本語に訳すと「社会的責任投資」となります。キリスト教の倫理的思考が起源にあるとされるSRIは、簡単に言うと、社会的な責任を果たしていない企業を投資対象から排除し(ネガティブ・スクリーニング)、あるいは反対に積極的に社会的責任を果たしている企業を投資対象とするというアプローチです(ポジティブ・スクリーニング)。

SRI の歩みSRI の歩み
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 富国生命投資顧問では、英国の投資会社の協力を得ながら2003年にSRI運用を開始しました。当時、SRI関連の商品を日本国内で取り扱っていたのは私たちを含め2、3社だったと記憶しています。社会的意義のある商品だと考えて提案を行っていましたが、馴染みの薄さからなかなか難しい面はありました。

 前述のとおり、GPIFのPRI署名を機に日本国内でもESGの認知度は格段に上がりました。私たちのお客さまである年金基金などからも要望が高まり、SRI商品を発展させたESG商品の提供を開始しました。環境やガバナンスへの関心の高まりとともに、ESG商品へのニーズも高まりつつあります。

 長期運用、特に老後資産のための投資とESGの考え方には強い親和性があります。親会社である富国生命が団体向けに提案している確定拠出年金のプランの中にも、ESG投資のファンドが含まれています。「貯蓄から投資へ」という国の方針に沿った個人型の確定拠出年金であるiDeCoのプランの中にも、ESG投資の商品が含まれるものがあります。確定拠出年金プランはまさに長期投資を通じた老後資金向けに国が税制優遇や条件緩和を行っているので、個人の方々にもそうした制度を使ったESG投資を検討してもらいたいと考えています。

 ESG投資は綿密な調査によって、見えない企業価値をあぶり出すことができ、財務数値などのみによって過小評価されているような企業の本来の価値を知ることができるものだと思っています。つまりESGは、投資に付加価値を生むものだと考えています。また、ESGは精査の過程で運用会社と企業との対話を深めることができ、運用会社にとっても投資先の企業にとっても、広い範囲で将来に向けての建設的な議論を通じて共にメリットを得られ、さらにそれが長期の投資成果に還元できると考えています。