独立系ITベンダー、富士ソフトの臨時株主総会が4日開かれる。物言う株主の3Dインベストメント・パートナーズが社外取締役4人の選任を求め、会社側がうち2人に賛成した上で別の3人を提案。計7人の取締役ポストを巡る対立の背景にあるのが、富士ソフトの「過度な自社オフィス開発投資による低資本効率」(3D)だ。富士ソフトの坂下智保社長がダイヤモンド編集部のインタビューに応じ、自社オフィスは「成長の支え」だとする反論を行った。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
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企業価値向上委員会でガバナンス議論
3Dの株主提案に一部賛成も「唐突感」
――3Dインベストメント・パートナーズが提案している取締役候補4人のうち、2人について富士ソフトが賛成したのはなぜでしょう。取締役構成が不十分だったと認めたということでしょうか。
3月の定時株主総会で、われわれは当時の取締役会構成でしっかりやっていくと宣言したわけですが、総会後に企業価値向上委員会を社内で立ち上げました。取締役会構成が不十分だったとは思わないですが、その議論の中で企業経営、法務、そして資本市場のスキルについて、さらに強化していこうと見直しを進めました。
そのスキルを持った3人の社外取締役候補をわれわれとして先に考えていたのですが、3Dさんから別の4人の提案があった。3Dさんが提示しているアジェンダも含めて吟味し、われわれのスキルセットの中でカバーできる部分以外で強化につながると判断した2人を、取締役会の人数枠も意識しながら選ばせてもらったということです。
――9月に3Dの株主提案を受ける前から、会社提案の取締役候補を検討していたのですか。
そうです。企業価値向上委員会は3月の総会直後から準備を始め、第1回を開催したのが6月です。8月22日に3Dさんから4人のリストが届き、うち3人について同月25日までに会社提案の取締役候補者として上程するよう求められました。
それは時間的にもプロセス的にも無理な話なので、「まずはアドバイザーとして企業価値向上委員会に入りませんか」と提案したのですが、「それでは駄目だ」ということでした。
――4人ではなく、3人を社外取に加えるよう求められたと。
はい。「4人の候補者のうち、どの3人を選出するかまではご確約いただく必要はございません」とのことでした。しかし、われわれとすれば少し唐突感がありました。
――3Dだけでなく、米議決権行使助言会社のISSも「富士ソフトのバリエーションの低迷と低い株価パフォーマンスは、当社の業界水準を下回る営業成績と不適切な資本配分が直接起因している」と指摘しています。これに対する反論は。
「不適切な資本配分」を指す最たるものが、不動産かと思います。これについては、ぜひとも話をさせていただきたい。
3Dが、取締役候補を提案する理由の一つとして挙げるのは、現取締役会が自社オフィスの保有による低資本効率を改善できなかった点にある。3Dの法務アドバイザーを務める牛島信弁護士も、富士ソフトが「不動産投資にのめり込んでいる」と指摘する(『“ヤメ検”の大物弁護士が「ダメ企業」を追及する真の狙いとは?伊藤忠やJPモルガンOBを社外取に推薦』参照)。次ページでは、こうした指摘に対し坂下社長が反論を行う。