独立系ITベンダーの富士ソフトに対し、大株主の3Dインベストメント・パートナーズが独立社外取締役4人の追加選任を求め、11月にも臨時株主総会が開かれる見通しだ。このタイミングで3Dの法務アドバイザーに新たに就いたのが、元検事でコーポレート・ガバナンスの第一人者として知られる牛島信弁護士(牛島総合法律事務所代表弁護士)だ。牛島弁護士の狙いは一体何か。本人に直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
富士ソフトへの株主提案が
日本を救う?!その理由は…
――牛島さんが3Dインベストメント・パートナーズの法務アドバイザーに就任した理由は何でしょうか。
今年3月、知人の紹介で3D代表の長谷川(寛家)氏に会いました。
実は僕自身、日本の「失われた30年間」の理由について、ずっと考えています。しかし一人で考えても分からないから(笑)、いろいろな人に会って話を聞いているんです。そこで僕なりに考えたのが、コーポレート・ガバナンスしか日本を救う方法はないということです。
企業は価値をつくり出す。その企業が価値をつくり出せなかったら成長はあり得ない。成長がなかったら、国民生活の豊かさはない。成長できる日本を次世代に残せるかどうかは、コーポレート・ガバナンスに懸かっているわけです。
長谷川さんと会ってそういう話をし、彼は「日本の会社は中長期的に成長できるようにならなければいけない」と言った。もし彼が短期で金もうけをしようと考えていたら、僕は手伝わない。長谷川さんと志が一致し、「それなら一緒に頑張りましょう」という話になった。
――富士ソフトは、中長期的に成長できる会社ではないのですか。
今回の提案に先立ち、3Dは今年1月にも富士ソフトに社外取締役2人の選任を求める株主提案を行っている。3月の定時株主総会で否決されはしたが、4割近い賛同を得た。その後、富士ソフトは「ステークホルダーに対する更なる価値向上を推進する」目的で企業価値向上委員会を設立。同委員会は取締役会出席者で構成し、ガバナンス体制の整備に関する検証などを行うとしている。それでも3Dは9月、2回目となる今回の株主提案に踏み切った。
3Dが新たに選任を求める社外取候補は、元伊藤忠商事CIO(最高情報責任者)の石丸慎太郎氏、元JPモルガン・チェース銀行駐日代表の岡村宏太郎氏、元ゴールドマン・サックス証券でひびき・パース・アドバイザーズ社長兼CIO(最高投資責任者)の清水雄也氏、元ジャスダック証券取引所社長で日本ペイント社外取締役の筒井高志氏の4人だ。次ページからのインタビューで、牛島氏は岸田文雄首相や岡藤正広・伊藤忠商事会長ら著名人の名を挙げながら、株主提案の「真の狙い」について明らかにした。