昨年から複数回にわたり値上げを試みている紙・パルプ業界。需要家の抵抗感は強く、ペーパーレス化が一層進んで、返り血を浴びるのは必至の情勢だ。特集『倒産危険度ランキング×インフレ・過剰債務で危ない725社』(全8回)の#6では、金利、物価上昇それぞれへの耐久度、有利子負債月商倍率、当座比率、自己資本比率の5指標で紙・パルプ業界を総合評価。診断結果を5軸のレーダーチャートにまとめ、強み・弱みが直感的に分かるよう工夫した。紙・パルプ業界の平均点は、全5指標で2860社の事業会社平均を下回り、その苦境ぶりがあらわとなった。なお、この記事は無料公開(要会員登録)。#5の完全版ランキングとセットで読むと、よりグラフィカルに紙・パルプ業界で危険な会社の状況を理解できる。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
紙・パルプ大手2位と4位の経営に変調
業界の病巣を5軸チャートで可視化
紙・パルプ大手4位、大王製紙の株価が下げ続けている。11月中旬に発表した2023年3月期の純損益見通しは、300億円の赤字(前期は237億円の黒字)。従来の40億円の赤字予想から赤字幅が拡大した。
石炭など原燃料価格の高騰で、収益が悪化している。さらに9月に子会社で起きたボイラー爆発事故も響く形だ。12月8日の終値は1024円まで下がり、6年6カ月ぶりの安値を付けた。年初からの下落率は実に46.8%に達している。
業界大手2位、日本製紙の業況もかつてなく厳しい。23年3月期は純損益が250億円の赤字へと転落する見通し。営業損益も200億円の赤字予想で、1949年に前身である十條製紙が上場して以来、通期では連結ベースで初の営業赤字転落となる見込みだ。
両社とも昨年から複数回にわたり値上げを試みているが、足元のコスト上昇のスピードに追い付いていない。需要家の抵抗感は強く、ペーパーレス化が一層進んで、返り血を浴びるのは必至の情勢だ。
こうしたことから、紙・パルプ業界の倒産動向に対して注目度が高まっている。11月に配信した特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』では、足元で倒産リスクを確認しておくべき16業界について、ダイヤモンド編集部は16本の倒産危険度ランキングを作成。2番目に反響が大きかったのが、『倒産危険度ランキング2022【紙・パルプ13社】』だった。
そこで今回は、倒産危険度で「危険水域」に入った13社を含め、紙・パルプ関連の全25社を対象に、金利上昇や物価上昇それぞれへの耐久度、有利子負債月商倍率、当座比率、自己資本比率の5指標で総合的に評価。診断結果を5軸のレーダーチャートにまとめ、強み・弱みが直感的に分かるよう工夫した。
紙・パルプ業界の平均点は、全5指標で2860社の事業会社平均を下回り、その苦境ぶりがあらわとなった。ウイークポイントは、どこにあるのか。早速、確認していこう。