大倒産時代のとば口となる2023年の到来が迫る。来年最大のリスク要因となるのは、現在も進行中のインフレだ。10月の企業物価指数は前年同月比で9.1%も上昇。原燃料費や仕入れ価格の大幅な上昇が企業収益を圧迫する。特集『倒産危険度ランキング×インフレ・過剰債務で危ない725社』(全8回)の#1では上場企業3935社の倒産危険度を総点検。さらに危険水域に入った508社について、10%のインフレで経営がどれだけ危なくなるかを独自試算した。営業赤字に陥る企業は別途、自己資本をどの程度棄損するかも加味して、ランキングを作成。債務超過に転落する企業は43社に上った。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
倒産“危険水域”にある508社は
「10%インフレ」に耐えられるのか?
新型コロナウイルス禍に苦しむ企業の資金繰りを支えてきた、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)は、9月に終了。つまり手元資金が細っているわけだが、そこに資源価格高騰や円安の進行に伴う急速な物価高、世界的に加速している金融引き締めなどが追い打ちをかけている。キャッシュアウトにつながるコスト上昇要因が、まるで包囲網のように増えてしまっているのだ。
このままいけば、2023年は大倒産時代の幕開けとなるかもしれない。
中でも最大のリスク要因と目されているのが、インフレだ。企業間で取引する物の価格動向を示す10月の企業物価指数は、前年同月比で9.1%も上昇した。13カ月連続で8%超えとなり、原燃料費や仕入れ価格の大幅な上昇が企業収益を圧迫している。
価格転嫁が十分にできない企業に待っているのは“死”である。だが、足元の価格転嫁率は4割にとどまっている。帝国データバンクの調査によると、コストが100円上昇しても、36円しか販売価格に反映できていないのが実態だ。
そこで、まずダイヤモンド編集部は、来年の到来を前に公開情報から「倒産危険度(Zスコア)」を算出した。短期的な資金繰りの圧迫度や負債の負担度合い、売り上げや利益を生み出す効率性など、五つの指標の合計値により計算される。
合計値が低いほど倒産リスクが高まり、1.81未満になると「危険水域」と判断される。上場企業3935社の倒産危険度を総点検したところ、500社超が危険水域となった。
このデータを基に今回は「もともと倒産の危険性がある508社が、10%のインフレで経営がどれだけ危なくなるか」が分かるランキングを独自に作成した。営業赤字に陥る企業は別途、自己資本がどの程度棄損するかも加味して、経営危険度を評価している。すると債務超過に転落する企業は43社にも上った。
チケット販売大手のぴあが、ワースト31位に入っている。このほか、イオンやANAホールディングス(HD)など複数の大手企業が営業赤字となり、自己資本を毀損する結果が出た。
小売りにホテルに旅行、居酒屋、製造業や航空……。「倒産危険水域508社×インフレで危ない会社」ランキングのワースト上位に、どんな企業が名を連ねたか、確認していこう。