新型コロナウイルスの感染拡大から約3年、日本企業の有利子負債残高は近年にない水準まで膨れ上がった。米国など各国の中央銀行は、インフレを抑えるために積極的な利上げを続ける。金利上昇圧力は世界的に強まっており、日本でもそのリスクは高まっている。怖いのは借金の大きさ。金利が上がれば支払う利息が増え、大きな負担を企業に強いる。来年は過剰債務問題が、企業の存亡に関わる重要なテーマとなる。特集『倒産危険度ランキング×インフレ・過剰債務で危ない725社』(全8回)の#2では、上場企業3935社の倒産危険度を総点検、リスクの高い508社をあぶり出した。さらにその中で、1%の金利上昇で収益が大幅に悪化する企業を探る独自ランキングを作成、経営が立ち行かなくなるのはどこかを見定めた。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
倒産“危険水域”の508社は
金利上昇の利払い増でさらに危機?
新型コロナウイルス禍で売上高が減った企業向けに、国の支援で実質無利子・無担保とした「ゼロゼロ融資」。実績は、累計でなんと約42兆円にもなる。その結果、企業の有利子負債は近年にない水準まで膨れ上がっており、収益を回復できないまま生き延びているゾンビ企業があふれるようになった。
ゼロゼロ融資は9月に終了したが、返済が本格化するのは2023年になる。そんな中、資源価格の高騰やインフレの進行で景気の減速懸念は強まっている。すでに借入企業の約1割が返済に不安を抱えるとの調査結果もある。
帝国データバンク情報統括部の内藤修情報取材課長は「借り入れが非常に膨らんでいる会社が多い。今までは金利が低いのが当たり前だったが、そうは言っていられない状況に追い込まれつつある」と指摘する。
インフレを抑え込むため、金利上昇圧力は世界的に高まっているからだ。米国など各国の中央銀行は、積極的な利上げを続けている。その上、来年は約10年続く異次元緩和を主導してきた日本銀行の黒田東彦総裁が退任することもある。日本でも低金利の環境から抜け出すタイミングが、遠からず訪れるとの見方が出てきた。
企業はコロナ禍を経て、過剰債務に陥っている。「この状況で少しでも金利が上がれば、足元の原材料やエネルギー価格の高騰に加え、懸念すべきコストアップ要因がもう一つ増えてしまう」(内藤氏)。企業収益や倒産動向が、さらに厳しくなるのは必至だ。過剰債務問題が、23年の重要テーマと目されるゆえんである。
そこでダイヤモンド編集部は、公開情報から「倒産危険度(Zスコア)」を算出した。短期的な資金繰りの圧迫度や負債の負担度合い、売り上げや利益を生み出す効率性など、五つの指標の合計値により計算される。
合計値が低いほど倒産リスクが高まり、1.81未満になると「危険水域」と判断される。上場企業3935社の倒産危険度を総点検したところ、500社超が危険水域となった。
繰り返すが、ここからの局面で怖いのは借金の大きさだ。金利が上がれば支払う利息が増え、大きな負担を企業に強いることになる。そこで今回、危険水域に入った508社について、1%の金利上昇で経営がどれだけ危なくなるかを独自試算した。経常赤字に陥る企業は別途、自己資本がどの程度毀損するかも加味して、経営危険度をランキングした。中には債務超過に転落する企業も現れた。
名門宴会場の「椿山荘」やワシントンホテルなどを運営する、藤田観光が9位に入った。このほか、エイチ・アイ・エス(HIS)やJR西日本など複数の大手企業が経常赤字となり、自己資本を毀損するという結果も出た。「倒産危険水域508社×過剰債務で危ない会社」ランキングのワースト上位が、どんな顔触れになったかを確認していこう。