円安と原燃料価格の高騰で、収益が急激に悪化する紙・パルプ各社。値上げを繰り返すも、生産コストの上昇に追い付けない。値上げに抵抗する需要家もあり、ペーパーレス化が一層進みそうだ。業界別の倒産危険度ランキングとして、特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#20で取り上げるのは紙・パルプ業界。13社が“危険水域”に入り、三菱製紙がワースト2位にランクインした。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
新聞用紙は水面下で40~50%値上げ
ペーパーレス化で返り血の紙パ業界
「新聞用紙の大幅値上げは、のむことができない。新聞購読料を引き上げなければ収支が合わなくなる。でもそうすれば、部数が一気に落ちてしまう」(大手新聞関係者)――。
新聞各社に対して、製紙会社が新聞用紙の大幅値上げを相次いで要求している。昨年から続く複数回の価格引き上げ交渉で、累計40~50%の値上げになりそうだ。
ティッシュペーパーやトイレットペーパーに、書籍やコピー用紙向けなどの印刷・情報用紙、段ボール原紙……。身近な紙製品はたびたび値上げがニュースになっている。
一方、新聞用紙の販売経路は、代理店や卸商を通さない。製紙会社が新聞各社に直接納入するため、その価格交渉の行方が広く知られることはない。
もちろん、新聞用紙の置かれた状況は、他の紙製品と大差ない。石炭やガスなどの原燃料価格や物流費の高騰により、生産コストが上昇し続けている点は同じだ。
新聞各社は「部数減を招く」として値上げに抵抗しているものの、印刷・情報用紙分野で国内首位の日本製紙ですら赤字という惨状にある(ちなみに同社は、紙・パルプ業界で王子ホールディングス〈HD〉に次ぎ第2位の大企業だ)。
既に製紙各社は、各種の紙製品で値上げに踏み切っているものの、価格転嫁が追い付いていない。新聞社側の主張は通りそうになく、さらなる大幅値上げを強いられ、経営が一層厳しくなりそうだ。
では、紙・パルプ業界が安泰かといえば、そうではない。遅まきながら値上げに成功したとしても、コスト増加のペースの方が上回るから、とてもカバーできない。そもそも、紙製品の値上げは、ペーパーレス化の加速を必然的に招き、紙・パルプ業界も返り血を浴びることになる。値上げをするも地獄、しないも地獄なのである。
そこで今回、ダイヤモンド編集部は紙・パルプ各社の倒産危険度ランキングを作成した。すると、13社が“危険水域”に入っていることが判明した。
財閥系の三菱製紙がワースト2位にランクインした。1位となった製紙会社は一体どこか。次ページでは、上位企業の顔触れを見ていこう。