アベノミクスへの期待で円安・株高が進む中、円債市場では10年国債利回りが低位で安定している。銀行が日本銀行に預ける日銀当座預金の法定必要額を超過する部分に対する金利撤廃や、長期国債買い入れ増額への期待が強いことなどを反映している。しかし、20年国債利回りなど超長期国債の金利が上昇傾向にあり、悪い金利上昇の前兆と捉える向きも多い。
上のグラフには10年国債と20年国債の利回り格差を示したが、実はこの格差が拡大し始めたのは2012年春だ。安倍政権発足をきっかけとしたものではない。12年の円債市場を振り返れば、日銀の資産買い入れ等の基金拡大に伴う債券需給逼迫で、中長期国債利回りの低下(価格は上昇)傾向が続いたと説明できる。
他方、基金拡大の影響は購入対象ではない超長期ゾーンには及ばず、また、超長期ゾーンの主な購入者である保険会社が20年国債などへの投資を控えたために、長めの金利の上昇(価格は下落)に拍車がかかった。
10年度、11年度に比べ、保険会社の超長期国債買越額は月間平均で2000億円程度減少しており、「日銀の購入が増えた中長期債」と「保険会社の買いが鈍った超長期債」という対照が生じた。保険会社の買い控えは、10年度に1.9%程度、11年度に1.8%程度であった20年国債利回りが、12年度上半期に1.6%台半ばまで低下したことによるところが大きい。