失われた10年がいつの間にか30年に。長期停滞にあえぐ日本経済の活路はどこにあるのか。特集『総予測2023』の本稿では、政府の各種委員も務める気鋭の女性エコノミスト3人に徹底討論してもらった。(構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
東京証券取引所とS&P500の時価総額
GAFAM以外の上昇率はほぼ同じ
――日本経済の長期停滞の原因は。
武田 大きく3点に整理できます。まず、世界第2位の経済大国になったときの仕組みを、成功体験故に変えられずにきたことです。固定的な労働市場は、新産業へのシフトや起業を難しくした面があります。画一的な組織もイノベーションを生みにくくしたと思います。
二つ目は、政府が改革に後手だったことです。1990年代半ばには生産年齢人口が減少に転じ、高齢化が進むことは分かっていました。しかし、女性の労働参加を支える取り組みも、社会保障制度改革もなかなか進みませんでした。
三つ目は、人的投資をおろそかにしてきたこと。30年間ほぼ横ばいを続ける賃金がその証しです。バブル経済崩壊後に就職氷河期世代を生み、非正規雇用が拡大。所得が伸びずに国内市場が縮小したことから企業の成長期待も低下、慎重な投資姿勢が続きました。
大槻 確かにその三つのポイントは重要ですね。東京証券取引所とS&P500の時価総額を比較すると、実は、米国のGAFAMを除けば、2000年以降新型コロナウイルス感染拡大前までの上昇率は大きく変わりません。違いは巨大IT産業があるかどうか。こうしたイノベーティブな企業が生まれにくかったことの背景として、労働力の固定化や、就業後のリスキリングの機会がなかったこと、異文化からの刺激が少なかったことが大きいと思います。
中空 雇用の流動化が進んでいないから労働生産性が上昇しない。アニマルスピリッツが失われた。いろいろ原因がいわれますが、これが問題だからと明確にいえるものがない、原因と結果が交じり合っている状態だと考えています。
――日本経済の活路を開くために最も有効だと考える施策は。