伝説の経営コンサル「一倉定」を知っているか?数々の社長を再生した狂気の熱意写真はイメージです Photo:PIXTA

一倉定という経営コンサルタントを知っているだろうか。亡くなって20年以上が経過するが、その語り口は今聞いても圧倒される。彼が社長を専門に経営を説く姿は、まるで何かと闘っているようだ。一倉氏の教えは何か。何にいら立ち、日本企業の何を変えようとしたのだろうか。(未来調達研究所 坂口孝則)

「一倉定」という社長の“劇薬”

 満員の教室に鳴り響く怒号。私はそのエネルギーがどこから来るのかわからなかった。鋭い目つきの男性は受講生を叱り飛ばし、「空気がたるんでいる!」とチョークを投げつける。まるで怒りによって自己治癒を図り、怒らなければならぬ業すら感じさせられた。

 一倉定(いちくら・さだむ)という人物を知っているだろうか。

 伝説の経営コンサルタントであり、鬼籍の人となって20年以上が経過する。筆者にとっては職業人の先人として、「先生」と称さねばならない。

 1918年4月群馬県前橋市に生まれ、前橋中学校卒業後に、中島飛行機の生産技術係長、富士機械製造の資材課長や、日本能率協会のプロジェクトマネージャーをなど経て、経営コンサルタントとして独立した。生産管理、管理会計の分野からはじめ、社長専門のコンサルタントとして伝説をつむいだ。鬼のような指導で知られ、赤字会社の再建に命を燃やし、5000社以上を手掛けた。経営コンサルタントなる職業を創り上げた一人であるのは間違いない。

 冒頭のシーンは、いくつか残る一倉氏の講義風景の映像だ。『社長学』の講義で、息をつく暇もなく会場に教義を投げかける。いわく、「お客の求めていない領域に社員を置いてどうする」「民主経営ほど怖いものはない」「すべては社長の責任だ」「ワンマン経営こそ正しい」……。

 その姿は、まるで何かと闘っているようだ。一倉氏の教えは何か。同氏は何にいら立ち、日本企業の何を変えようとしたのだろうか。