特に気を付けたいのは、管理職への支援

 自殺が起きた直後や面談時は問題がなくても、しばらくして後からガクッと不調に陥ってしまう人もいる。管理職や人事担当者の中には、張り詰めた状態で対応に走り回っていたため、落ち着いたころに不調が出る人もいる。

 特に注視したいのは、直属の上司だ。故人に対しての思いを強く持ちながらも、部下や組織を守る意識があるため、「自分がしっかりしなければ」と抱え込みがちだからだ。面談でも、「自分は大丈夫なので、部下をケアしてあげてほしい」などと発言したものの、周囲が回復してきたタイミングで不調が出始めたりする。ところが、「周囲が元気になりつつあるのだから、自分も元気でいなければ」と頑張ってしまい、さらにつらくなってしまうのだ。だから、とりわけ管理職へのケアは大切だ。

 このように面談のタイミングや立場によって、遺された各人の状態はさまざまだ。必ずしも不調が出ているタイミングで支援ができるとは限らない。そのため、カウンセリングでは、今後起こり得る心身の反応について説明し、その際の相談先についても共有をしておく。

 専門の相談先でなくても、気軽につらい気持ちを打ち明けられる点では、家族や友人といった話しやすい人に話すことでもいい。大切なのは、追い込まれたときに助けを求められるか、必要な支援にアクセスできるかどうかだ。それには個人の意識が重要であり、支援へのアクセスのしやすさ、相談行動につながりやすい仕組みを整えることが組織の役割となる。