働き方は、組織中心から
プロジェクトベースへ

 web3は、個人の働き方を根底から変え、固定的な組織ベースから「プロジェクトベース」の働き方への移行を促します。

 その象徴となるのが「DAO(ダオ)(※2)」と呼ばれる組織形態です。DAOでは、会社組織のような上意下達はなく、対等な立場のメンバーによる直接民主主義で物事が進みます。

 プロジェクトベースの働き方とは、例えて言うなら、すでにソフトウエア開発の世界で大きな成功を収めている「オープンソースプロジェクト」のイメージです。

伊藤穰一氏が就活生に直言、「web3時代をどう生きるか」いとう・じょういち/デジタルガレージ取締役・共同創業者・チーフアーキテクト。千葉工業大学変革センター長
1966年生まれ。社会とテクノロジーの変革を標榜し社会課題解決に向け活動中。米マサチューセッツ工科大学メディアラボ所長、金融庁参与ほか要職を歴任。
Photo by Kuniko Hirano

 オープンソースとは、核となる知的資産であるソースコードを一般公開しているソフトウエアをいい、プロジェクトは開発者有志によるボランティアで運営されているケースが多いのです。

 プロジェクトのどの部分で貢献するかは参加者自身が決めます。このやり方で、Linux(リナックス)をはじめ、社会のデジタル化を支える多くのソフトウエアが開発されてきました。

 このように、メンバーが自発的にやりたいことを決め、その部分で貢献し、貢献の成果がコミュニティで認められるという文化は、まさにDAO的であるといえるでしょう。

 後述するように、DAOには、参加者の貢献に対する“報酬”として、プロジェクト独自の通貨「トークン」を発行する仕組みを備えているものもあります。

 この他にも、プロジェクト管理、参加者による投票など、必要な仕組みはソフトウエアで作成し、活動履歴はブロックチェーンで管理しますから、誰でも簡単に立ち上げられ、自分の貢献した内容を内外に客観的に証明することができます。

※2 DAO:Decentralized Auto-nomous Organization(分散型自律組織)の略。代表者は置かず、全メンバーが対等な立場でプロジェクト運営に参加する組織形態

*後編は4月19日に公開予定です。