*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2023」の「識者に聞く!『不確実性』時代を生き抜く知恵」を転載したものです。
日本経済の不確実性が増す中、学生はどんな指針を持って就職活動をするべきなのか。足元の景気動向から中長期で日本経済が抱える課題まで、気鋭のエコノミスト・永濱利廣氏が解説する。(取材・文/奥田由意 撮影/加藤昌人)
円安や物価高……
日本経済の「不確実性」が高まっている
コロナ禍に加えて円安や物価高が進み、日本経済の「不確実性」が高まっています。その行方をどう読み解けばいいのでしょうか。
まず、日本経済の短期的な見通しですが、実はそれほど心配する必要はないかもしれません。
一般的に、学生の多くは大企業・有名企業志向です。円安になれば日本企業の製品が外国市場ではドル建てで安くなり、競争力が上がって売り上げが増えるので、自動車や機械など輸出産業の大企業にとって円安は追い風といえます。
また、リーマン・ショックなどの際に新卒採用を減らして人材不足に陥った経験から、仮に景気が悪化しても、企業が採用人数を大きく絞ることはないでしょう。
その一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連などの新しい人材ニーズは堅調に増えているので、新卒採用は今後も売り手市場が続くはずです。
足元の経済状況は不安ばかりが誇張して語られています。日本経済に何が起きているのかを、客観的に読み解くことが大切です。
例えば1ドル=140円台の円安は、経済にとってややダメージが大きい。これは米国が「インフレを退治するまで利上げをする」と言明しているせいです。米国の政策金利が上がると資金が米国に引き寄せられ、ドルの人気が高まり、相対的に金利が低い日本円が売られて円安になります。