円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術#10Photo:PIXTA

最大の節税商品として人気だった生命保険。だが、相次ぐ国税の規制により急速につぶされつつある。法の網をかいくぐる形で開発された節税商品「名義変更プラン」も、今年7月に、それを販売していたマニュライフ生命保険への業務改善命令の発令で完全についえた。だが、そもそもこれらの保険商品は本質的な意味で節税とは程遠いものだった。特集『円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術』(全16回)の#10では、そのカラクリを詳しく解説しよう。(税理士 吉澤 大)

バレンタインデーショックに続くホワイトデーショック
金融庁を激怒させた低解約返戻金型保険とは?

 2019年2月14日、国税庁は、定期保険の当初の損金算入割合についての制約を打ち出し、日本生命保険の「プラチナフェニックス」をはじめとする「全額損金型生命保険」による節税は、大きな規制を受けた。保険業界では、この改正について「バレンタインデーショック」とも呼んでいる。

 このバレンタインデーショックの際に、「もう全額損金型の節税保険は終わり。でも、こちらならば大丈夫」と積極的に販売された保険が「低解約返戻金型保険の名義変更プラン」通称「名変プラン」というものなのだ。中には、億単位の販売手数料を得て、さっさと廃業をした保険代理店もあったという。

 バレンタインデーショックの際には、当初は過去の保険契約までさかのぼって規制をするのではとうわさされ保険会社は震え上がったのだが、結局過去の契約にまではさかのぼって規制されることはなかった。

 しかし、そんな国税庁の警告に反省することもなく、悪質な租税回避行為を先導する保険業界に対して、21年3月、この名変プランについての改正を保険会社各社に通知。前回のバレンタインデーショックになぞらえ「ホワイトデーショック」などともいわれている。

 この名変プランをはじめとする節税商品の販売について、22年7月14日、金融庁は外資系生命保険会社マニュライフ生命に対して、保険業法に基づく業務改善命令を出した。税負担軽減以外の合理的理由のない不自然な契約形態を駆使して、アンフェアに税負担を軽減する「租税回避行為」を狙った保険商品開発、営業手法が、悪質でかつ組織的に行われていると判断されたのだ。

 金融庁を激怒させた節税商品、名変プランはどのようなものだったのだろうか。そして、実はこの名変プランに対する規制が21年にかかる前から、この商品は節税効果があるとはいえない無駄なものだったという可能性が高いのだ。次ページで説明するそのカラクリを知れば、今後もこの種の商品に踊らされないための耐性がつくはずだ。