「バイデン大統領自らホワイトハウスの南正面玄関に出迎えてもらった。大変手厚く、親密な対応をしていただいた」
首相の岸田文雄は欧米5カ国歴訪の最後となった米ワシントンでの日米首脳会談後、こう語った。
歴訪に随行した官房副長官の木原誠二の説明によると、バイデンは岸田を出迎えると、庭に面した長い廊下を2人で歩いて会談場所に向かったという。米大統領が直接出迎えることはまれで、さらに副大統領のハリスは岸田を副大統領公邸に招いて朝食会を開き、そのこともサプライズだったようだ。
バイデンが歓待した理由は明快だった。昨年5月のバイデン来日の際に合意した約束に関して岸田が“満額”以上の土産品を手にワシントン入りしたからだ。岸田は1月13日午前(日本時間14日未明)のバイデンとの会談で、反撃能力保有を含む防衛力の強化や防衛費増額について説明した上で、こう述べている。
「日米同盟の抑止力、対処力を強めることにつながる」
これをバイデンが歓迎しないはずはない。岸田は5月19日から地元の広島で開催予定の先進7カ国首脳会議(広島サミット)で議長を務める。その地ならしという点では一定の成果を上げたといえる。しかし、帰国した岸田には高いハードルが待ち構える。日本の安全保障政策の大転換について国内的な説明はこれから始まるからだ。岸田に対する批判もそこにある。
通常国会の召集は1月23日。野党側は手ぐすね引いて待ち構える。共産党書記局長の小池晃は16日の会見で重ねて岸田を批判した。
「まず米国に防衛費増額を約束し、次に国会で説明するのは順序が逆だ。国民主権ではなく米国主権ではないか」
中でも防衛費増額に伴う増税方針を巡っては、立憲民主、日本維新の会、国民民主、共産など野党がそろって反対を表明している。野党側も一枚岩とはいえないものの、野党側が岸田の前に立ちはだかることは確実だ。昨年の臨時国会では、立民と維新の国会共闘が成立して野党側にペースを握られ、守りの国会を強いられた。