「ひょっとすると政変になるかもしれない」。臨時国会最終日の2022年12月10日夕、自民党内に緊張が走った。党内非主流派幹部らが異口同音にこう漏らしたからだ。きっかけは経済安全保障担当相の高市早苗のツイッターへの投稿だった。
「このタイミングで発信された総理の真意が理解できません」
高市が指摘した首相、岸田文雄の「発信」とは、防衛費増額に伴う財源を確保するための増税を打ち出したことだ。岸田は23年度から5年間の防衛費の総額について約43兆円と決定した。これを安定的に維持するには、毎年度約4兆円の追加財源が必要となる。そこでその4分の1に当たる1兆円を増税で賄うというわけだ。このことに高市がかみついたのだった。しかも高市の反発には個人的な感情も入り交じった。
「普段は(自分にも)出席の声が掛かる一昨日(12月8日)の政府与党連絡会議には、私も西村康稔経済産業大臣も呼ばれませんでした。(中略)その席で、総理から突然の増税発言、反論の場もないのかと、驚きました」
ここで高市が触れた西村も12月9日の記者会見で公然と岸田の方針に異を唱えていた。
「このタイミングで増税については慎重にあるべきだ」
西村は安倍派の次期会長候補にも名前が挙がる幹部の一人。高市も死去した元首相、安倍晋三の側近議員として知られる。この2人だけでなく、政調会長の萩生田光一もこのタイミングで台湾を訪問した。日台関係の強化も安倍が心血を注いだ外交の柱。「台湾有事は日本の有事だ」と真っ先に発言したのは安倍だった。