長丁場の通常国会が始まったが昨年までとは明らかに空気が違う。最大の要因は元首相の安倍晋三が凶弾に斃れたことにある。政界全体が軸を失って方向性が定まらないのだ。安倍の死によってさまざまな“化学変化”が生じ、自民党内はもとより与野党の関係もガラリと変わった。その化学変化の中心にあるのが日本維新の会。ありていに言えば「モテモテ維新」なのだ。
もともと維新は共同オーナーだった橋下徹(元大阪市長)と松井一郎(現大阪市長)がけん引した大阪の地域政党。それが国政に進出して影響力を発揮できた背景には橋下・松井と、安倍と安倍内閣の官房長官だった菅義偉(前首相)との太いパイプがあった。このため維新は「官邸直結型野党」と称されるほどだった。
逆に自民党大阪府連は維新の躍進と反比例するように弱体化する。2021年10月の衆院選では、大阪府内の28小選挙区で自民党の当選者はゼロ。もはや大阪は維新一色の「維新の城下町」(自民党幹部)と言っていい。このため自民党幹事長の茂木敏充が維新を厳しく批判したこともあった。
「身を切る改革ではなく、身内に甘い政党だ」
これに松井が反論した。
「大自民党の幹事長としたら薄っぺらい」
昨年の参院選前のことだから割り引くにしても感情的にもつれていたことは間違いない。さらに参院選中に安倍が落命すると、パイプ役を失い、自民と維新との溝は一層深まった。
「これまでの自民党との関係はゼロになってしもた。ほなら自民を干したれということになった」(維新幹部)