金融の国際交渉を15年リードした日本人が得た「フィードバックは贈り物」の精神Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 最終回となる今回は連載を締めくくるにあたり、国際機関を長く統率し国際基準の制定に携わってきた中で得た学びについて、「自分」「同志」「意思疎通」の三つのキーワードを用いて紹介したい。

 国際機関におけるマネジメントや国際基準制定作業は、仲間と対話しながら社会にとって意味のあるものをつくり上げていく過程である。その中で私は、仲間との関係強化に最も心血を注ぎ時間も割いてきた。何かを実現したいという強い思いを持っているのなら、心を込めてそのことを周りに伝え、仲間の共感を得ながら目標を追いかけるべきである。そして、仲間のことをより深く知り、一緒に夢中になって活動することで、一人の力では成し得ないような大きなことが実現できる。こうした過程こそが国際機関経営や国際基準作りの醍醐味だ。

未知の「自分」を見つける

 もともと私は国際機関や国際基準とはまったく縁のない世界にいた。だが国際機関で国際基準制定作業に携わってみると、自分の知らない自分が存在することに気が付いた。

 日本で育ち学生時代はテニスに明け暮れ、大学卒業後は保険会社で地域営業に励んでいた。そんな私が、保険監督者国際機構(IAIS)との出会いですべてが変わった。私が初めて参加した1996年のIAISパリ年次総会。衝撃的な経験だった。世界中から集まった人間味あふれる保険当局の幹部たちが、何も分からない私を温かく受け入れてくれた。そしてこの会議こそが、IAISが保険の国際監督基準を策定する存在になることを宣言した場であった。