少子化こそが
日本最大の有事

 少子化は日本にとって最大の有事だ。それはOECD加盟38カ国の中で最も早く少子化が進んでいる韓国を見ればよくわかる。

 韓国統計庁によれば、2021年の出生率は0.81。首都ソウルで言えば0.63だ。これは日本の1.30(首都・東京は1.08)よりはるかに低い。このまま推移すれば、5100万人ほどいる韓国の人口は、2100年には半分近くにまで減少する。

「韓国の女性、特にソウルの若い女性は、日本の女性より所得が高く自立してますよね。結婚しなくても生きていけますし、出産しないほうが第一線で働けますしね」

 筆者の問いに語るのは、ソウル大学研究員の吉方べき氏である。

 確かにその通りだが、韓国の人口減少に関しては、2006年の段階で、オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。

 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう。

 先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」(制度が整備されないうちに老いてしまう)が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる。

 OECD加盟国の中で、4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい。