岸田文雄政権の支持率は低迷を続け、混迷の度を深める2023年の政局。最大のポイントは岸田首相が衆院解散権を行使するか否か。特集『総予測2023』の本稿では、解散時期や波乱要因、さらに野党の動向なども踏まえて、「ダイヤモンド・オンライン」の人気連載「永田町ライヴ!」の特別編として、政治コラムニストの後藤謙次が波乱含みの日本政治を読み解く。
弱い野党と「ポスト岸田」不在に
助けられて延命している岸田政権
元首相の安倍晋三が凶弾に斃れたのは2022年7月8日。以来、日本の政治はほぼ思考停止状態といっていい。
12月10日に閉幕した臨時国会も、安倍の死とともに表面化した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る「負の遺産」の収拾に大半のエネルギーが費やされた。何とか会期末ぎりぎりで「宗教2世」ら被害者の救済新法を成立させたが、首相の岸田文雄に推進力を与えたわけではなかった。
むしろ、この間に3閣僚の連続更迭という政権の致命傷になってもおかしくはない前代未聞の事態が起きた。しかもその混乱を招いた要因が岸田の判断の遅れだったことも、岸田に対する失望感を増幅させた。23年を岸田が無傷で乗り越えられるのか。その保証はどこにもない。
22年7月の参院選で自民党が大勝した後の岸田は向かうところ敵なしに見えた。しかし、早過ぎた安倍の国葬の決定、内閣改造の失敗、そして腰が引けた旧統一教会問題への対応など、 “自責点”を重ねた。
その結果、岸田を支えた内閣支持率はみるみるうちに下降を続けた。今も低迷したまま浮上の気配は一向に見えてこない。
読売新聞の調査を例にとれば、参院選後の支持率は65%。不支持率は24%にすぎなかった。それが5カ月後の12月の調査では支持率(39%)と不支持率(52%)が逆転した。どうひいき目に見ても神風が吹き、劇的に流れを転換させる処方箋があるとも思えない。
ただ岸田があっさりと政権を投げ出すタイプのリーダーではないことは、21年の首相就任時からの岸田を見ればよく分かる。古くから岸田を知る自民党幹部は「柳に枝折れなし」と語る。加えて岸田を取り巻く政治状況が岸田を助けている。この幹部はこう言い切った。
「弱い野党と自民党内のポスト岸田不在」
しかし、このまま岸田が何の手も打たないまま政権を維持できるはずはない。
そこでまず浮上したのが内閣改造による人心一新論だ。すでに3閣僚の更迭で「ミニ改造は終わっている」(岸田側近)との見方もあるが、客観的に見て1月に召集される会期150日間の通常国会を今の布陣で乗り切るのは至難の業。かろうじて臨時国会で野党側の追及をしのいだ復興相の秋葉賢也については、自民党の幹部ですらさじを投げる。
「とても秋葉を抱えていては持たない。傷口が浅いうちに手を打つべきだ」
さらに国会運営を巡って不手際が続く国対委員長の高木毅も、人事対象と言っていいだろう。このため、岸田に大幅な人事刷新について直接進言する幹部もいる。現に岸田自身がその意思を示したことがある。11月19日、訪問先のタイのバンコクで行った内外記者会見だ。
「難度の高い課題に挑戦していくため、適切な(改造の)タイミングを総理として判断したい」
その後、岸田自身は「内閣改造は全く考えていない」と全否定をしたが本心ではないだろう。
12月になって時事通信が報じた国民民主党の連立政権入りのニュースも大幅な内閣改造説と密接に絡む。国民代表の玉木雄一郎の入閣説も取り沙汰される。
次ページでは、「自民・公明+国民民主」の連立の思惑をはじめ、台風の目になり得る野党連携の動き、そして、最大の波乱要因となる自民党内の「サイレントマジョリティー」の動向などについて解説する。