国会論戦の焦点となる
「2つの有事」への対応

 通常国会のもう一つの焦点、防衛費増額と増税問題はどうだろうか。

 政府は去年12月、2023年度から2027年度の5年間の防衛費を43兆円規模とする方針を決定した。この水準を維持するとなると、2027年度以降、4兆円が不足し、このうち歳出削減などでは賄えない1兆円分を増税で賄う案が取り沙汰されている。

 増税といっても、法人税、たばこ税、復興特別所得税(一部付け替え)、そして消費税などが考えられる。どれも「防衛費のために」となるとなじまない。

 ただ、冷静に考えて、年々高まる中国による台湾有事のリスク、そして北朝鮮によるミサイル開発の現状を思えば、国土の防衛を「広く浅く」国民が負担するのはやむを得ないことのように感じる。

 自民党外交部前会長で自衛隊出身の佐藤正久参議院議員は語る。

「中国が台湾に侵攻するとなると浅瀬が多い台湾海峡は使いにくい。台湾本島の大部分が天然の要害なので、攻めるとすれば島の東側になる」

 だとすれば、与那国島など八重山諸島はいやが上にも巻き込まれる。当然、中国は在日アメリカ軍基地なども標的にするため、台湾有事=日本有事になってしまう。

書影『日本有事』(集英社インターナショナル新書)『日本有事』(集英社インターナショナル新書)
清水克彦 著

 個人的には、防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思うが、これまで日本の防衛費の国民負担が1人当たり年間4万円(韓国12万円、英仏10万円)に抑えられてきたことを思えば、それこそ復興特別所得税(年収600万円の人で年間約1万円)程度の負担は仕方がないと考える時代に来ているのではないだろうか。

 日本にとって少子化は、放置すれば国家の衰退につながる「静かなる有事」であり、中国による台湾への軍事侵攻は「騒々しい有事」である。これら2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦、「政治には関心がない」という方も、ぜひ注目していただきたいと思っている。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)