もちろんこういった思い込みは、全員にあてはまる事実ではありません。平均をとれば、少しはその傾向があるのかもしれませんが、個人差の方が大きいのです。そういう人もいるけれど、そうでない場合もあるということです。個人の限られた経験による「思い込み」です。アンコンシャス・バイアスは、さまざまなところに潜んでいます。

レッテルを貼ることが、いつか自分に跳ね返ってくる

 いわゆる学歴が高かったとしても、優秀ではない人もいます。逆に大学卒でなくても、優秀な人もたくさんいます。人それぞれ異なる存在なのに、まとめてレッテルを貼って、「こういう人」と思い込んでしまうことこそ、アンコンシャス・バイアスなのです。さらにその思い込みがエスカレートしてしまうと、偏見や差別にまで発展してしまいます。入社試験で女性の方がしっかりしていて優秀な成績でも「女の子は入社後のびないが、男の子は成長する」と思い込んで男性を採用するといったことが当然のように行われています。

 しかも、アンコンシャス・バイアスは、自分自身にも跳ね返ってきます。例えば、女性が「女性の幸せは結婚して子どもを産むこと」と考えてしまう。あるいは男性が「男性はちゃんとした職に就き、妻子を養える収入が必要」と決めつけてしまう。

 私はアンコンシャス・バイアスにおける最も大きな問題は、ここにあると考えています。すなわち、自分自身がアンコンシャス・バイアスにとらわれて自分の価値観が影響されてしまうことで、自分の視野を狭め、世界を小さくしてしまうということです。

 今、社会は大きな変化を迎えています。ICTの普及によるリモートワークなどの生活の変化はもちろん、LGBTQや夫婦別姓の問題など、多様な価値観を認めることも求められています。そんな社会にいちいち腹を立てないで適応していくためにも、自身の中にアンコンシャス・バイアスがあることを認めていくことから始めていかねばならないと思います