DX成功の四つの勘所と
デジタルイノベーションの五つのステップ
内平 デジタルイノベーションデザインには四つの視点が必要で、それがDX成功の勘所ともいえます。四つの視点とは、次の通りです。
一つ目は、課題と目標、提供価値を明確にする「価値設計」。二つ目はIoTやAIなどのデジタル技術で提供価値をどう実現するかという「システム設計」。従来のイノベーションデザインはこの二つ目まででしたが、本格的なDXは自社だけでは達成できず、他社あるいは他者をどう巻き込んだり、活用したりするか、つまり、エコシステムをどうつくるかという「戦略設計」が必要です。そして四つ目が、どうやって困難を乗り越えて事業を発展させるかという「プロジェクト設計」です。
――その四つの視点に基づいて、具体的にはどのようなプロセスでデジタルイノベーションデザインを進めていけばいいのでしょうか。
内平 私は主に五つのステップで構成されるデジタルイノベーションデザイン手法を提案しています。
ステップ1では、「顧客と提案価値の明確化」をします。価値提案キャンバスやビジネスモデルキャンバスといったフレームワークを用いて、顧客やリソース(経営資源)、パートナー、収益構造を意識しながら、サービスの提案価値を抽出します。
ステップ2は、「IoTやAIによる提案価値の検討」です。ステップ1で抽出された提案価値ごとにSCAIグラフを活用して、センサーデータと提案価値の関係を明確化するとともに、知識処理のパターンを用いて新しい提案価値を発見します。
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ステップ3の「エコシステムの戦略策定」では、リソースを外部から吸収したり調達したりすべきオープン領域と、価値の源泉として守るべきコア技術などのクローズ領域を組み合わせたオープン&クローズ戦略を策定します。オープン領域で活用するリソースとしては、技術や人材などの「外部知識リソース」、受託生産企業などの「外部調達リソース」、製品・サービスを市場展開する上でのパートナーなど「外部展開リソース」があります。
そして、ステップ4の「事業化シナリオの設計」で、IoTやAIを使ったサービスをビジネス展開するために必要なアクションを時系列で抽出していきます。最後のステップ5では、提案しようとしているビジネスで想定される困難は何かを全て洗い出し、その対策を製品開発で用いるリスク評価手法のFMEA(故障の影響解析)を使って整理し、「リスクの可視化と共有」を行います。