防衛費増額の財源として国債償還の60年ルールの80年への延長が取り沙汰されている。一見、財源が生まれるように見えるが、実態は借金の先送りであり、単に債務残高を増やすにすぎない。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
80年に延長で本当に財源捻出できるか
2023年度予算を基に「真贋」を検証
自民党の萩生田光一政調会長は、防衛費増額の財源として、国債の60年償還ルールの見直しを挙げている。60年を80年に延長しようというのだ。今後、自民党での議論も進められる予定だ。
具体的にはどういうことか。
発行された国債には、償還期限がある。通常に考えれば償還期限が10年の国債であれば、10年後に償還されるはずだ。しかし現実にはそうなっていない。
発行残高の60分の1に当たる額を国の一般会計予算から、国債の償還、借り換えを行うために設置された国債整理基金特別会計に繰り入れる。
一般会計の歳出にある債務償還費がこれに当たる。60分の1ずつ毎年償還財源を積むことで60年間かけて全額を償還することになっている。残りの金額については、借換債を発行する。
なぜ60年か。このルールは国債発行によって調達された資金が公共事業に充てられる建設国債のために設けられたものだからだ。
道路、橋などインフラの平均的な耐用年数を60年と見積もり、それに合わせる形で国債を発行して借り入れた資金を60年間で償還するというわけだ。
赤字国債については、当初60年ルールは適用されず、償還時は現金での償還が原則とされていた。それが、赤字国債の発行残高が積み上がっていく中で、1985年度からは赤字国債にも適用されるようになった。
期限を60年から80年に延長することで新たな財源確保につながるという理屈だが、実は、期限延長は政府債務を増やし、財政規律を弛緩(しかん)させるだけなのである。次ページ以降、2023年度予算を例に説明していく。