2022年は世界的なインフレを受けて各国中央銀行が利上げに踏み切る中、日銀の黒田東彦総裁は政策変更を拒み続けた。23年春の任期満了に伴う体制刷新で、長期金利固定の終了はあるのか。特集『総予測2023』の本稿では、日銀が金融政策を転換する時期と条件を検証した。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
日本と意外な共通点あり
スイスが利上げを開始した理由は
日本銀行は、持続的・安定的な物価の上昇には至っていないとして、超金融緩和を継続している。片や海外の大半の中央銀行は、世界的なインフレの高騰に対応するため、着々と利上げを進めた。
象徴的な事例はスイスだ。下図を見ると、インフレ率は日本と大差ないことが分かる。にもかかわらず、スイスの中銀は2022年6月に利上げを開始し、9月にマイナス金利を解除したのだ。
スイス中銀総裁は次のように述べている。「経済の不確実性が増しており、構造変化が起きているかもしれない。このようなときは中銀の経済モデルの予測力は下がるので、pragmatism(実用主義)で政策を講じる必要がある」。とても腑に落ちる説明だ。
日銀の黒田東彦総裁にそのような柔軟性はない。かたくなに政策変更を拒み続けているのはなぜか。