「サッポロ生ビール黒ラベル」と「ヱビス」というビール二大ブランドを抱えるサッポロビール。足元の販売は、「黒ラベル好調、ヱビス苦戦」と明暗が分かれるが、野瀬裕之社長は“二刀流”を続ける意義を強調する。その裏ではビール工場再編に着手。特集『ビール完敗』の#9では、サッポロビールの野瀬社長が、繰り出す次の一手に迫った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)
8年ぶりのビール類前年超え
黒ラベルには「反発力」ついた
――2022年はビール類の販売数量が前年比103.2%で、サッポロビールとしては8年ぶりの前年超えをしました。
やろうとしていたのは、われわれが強みにしたいと考えるビールの成長を真ん中に置き、しっかりブランドを立てていくことでした。
20年10月の酒税改正以降は新商品を出さずに、既存商品のサッポロ生ビール黒ラベルとヱビスを中心にやっていこうと決めていました。ですから、21年に戦略・戦術が変わったという意識はありません。ビール類の新商品を出さずに、前年を超えられたのは成果といえるでしょう。
――23年春に、サントリーがスタンダードビールの新商品を投入します。同価格帯の黒ラベルには影響が出るのではないでしょうか。
他社の商品はまだ分からないので、その点へのコメントはないです。
ただし一つ言えるのは、黒ラベルのコンディションは「悪くない」。22年10月の値上げ直後は、9月の買いだめもあって販売数量が落ちました。ところが、同年12月や23年1月には非常に良い売れ行きに戻ってきたのです。ですから、外的要因で何かあっても黒ラベルには「反発力」がついてきていると感じます。
――その理由はなぜですか。
長年の努力でしょうね。ブランドが若返っていることも大きい。
他社で新商品が出れば当然、一時的なインパクトはあります。大事なのは、早期に良い状態に戻れるかどうかがであって、それこそが「ブランド力」。黒ラベルにはその素地ができています。ですから黒ラベルは、(サントリーの新商品が投入されても)そこまで大きなインパクトにはならないのではないかと思っています。
ビールで、黒ラベルとヱビスの二刀流を続けるサッポロビール。しかし、販売動向を見ると、「黒ラベル好調、ヱビス不調」という状況だ。それでも、二刀流を続ける意義とは。次ページでは、野瀬裕之社長がその“意義“を明かすとともに、生産体制の再編によるRTD事業強化についても激白した。