ビール完敗#11Photo by Koyo Yamamoto

クラフトビール最大手ヤッホーブルーイングは、19年連続増収を果たすなど右肩上がりの成長を続けている。主力ビール「よなよなエール」などが広告なしでも、大手4社の商品に押し出されず大手小売店の棚に置かれ続ける理由は何か。特集『ビール完敗』の#11では、井手直行社長を直撃した。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

19年連続増収!コロナ禍で「巣ごもり需要」取り込み
数年以内にクラフトは「ビール市場でシェア5%」の時代に

――公表されている2021年11月期まで19期連続増収を果たし、過去最高益も更新しました。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「巣ごもり需要」の恩恵にあずかったことは大きいですね。公式ビアレストランの売り上げなどは激減したものの、スーパーやコンビニなど小売店での売り上げが成長しました。なかなか旅行にも飲食店にも行けない中で、自宅でおいしいものを飲みたいという需要にわれわれがはまったのです。

 主力の「よなよなエール」の21年の販売数量は、5年前の16年と比較して約2倍に成長しています。こうした結果、(小売店販売の比率が高いこともあり)増収となりました。

――現在、日本のビール市場(大手メーカーとクラフトビールメーカーが製造する、ビールと発泡酒の合計)に占めるクラフトビールの比率は、数量ベースで1%程度、金額ベースで2%程度とされています。今では、資本関係のあるキリンビールも注力しています。今後のクラフトビール市場の見通しは。

 クラフトビール市場の成長トレンドは、3回の環境変化が後押ししました。1回目が(1994年の酒税法改正の追い風を受けた)地ビールブームで、2回目が(10年代の)ビアレストラン増加による市場拡大。そして3回目がコロナ禍です。今後も数年以内に、(既存の成長トレンドに加えた)チャンスがあれば、ビール市場に占めるクラフトビールの比率も5%程度まで伸びるのではないでしょうか。

(クラフトビールのトップメーカーである)ヤッホーブルーイング自身が中長期的に目指すのは、国内のビール、発泡酒、新ジャンルを合計した「ビール類市場」全体で「シェア1%」。沖縄のオリオンビールのシェアが現在1%程度で、「なんとなく知っている」という方が多いです。そのくらいのシェアとなれば、世の中のビール類市場を変えるスタートラインに立てるかなと思っています。

19期連続増収を続ける“主戦場”は、スーパーやコンビニなどの小売店だ。そこでは、キリンやアサヒなど大手メーカーが、“棚取り合戦“を繰り広げている。ビール類市場のシェアで1%にも満たないヤッホーブルーイングが大手に押し出されない理由は何か。次ページ以降では、同社の井手直行社長が、「広告なし」でも小売店に置かれ続ける理由を明かした。