ビール完敗#7Photo:Diamond

アサヒグループホールディングスは国内の中間持株会社、アサヒグループジャパンを2022年に設立し、23年1月から“特殊部隊”も始動した。しかし、中間持株会社はビール業界では“鬼門”だ。キリンホールディングスとサントリーホールディングスは中間持株会社の設立からわずか5年程度で解散した“負の歴史”がある。特集『ビール完敗』の#7では、周回遅れで中間持株会社を設立したアサヒの勝算を探った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

サントリーBWS、キリンは5年程度で廃止
ビール会社の中間持株会社「負の歴史」

「本当の意味での一貫した体制が難しかった」。サントリーの鳥井信宏社長は、自らが社長を務めた中間持株会社のサントリーBWSの廃止理由についてこう自省する。

 ビール会社にとって、中間持株会社は“鬼門”だ。

 サントリーホールディングス(HD)は、2017年に国内酒類事業を束ねる中間持株会社のサントリーBWSを設立した。しかし、冒頭の鳥井社長の言葉が示すように、サントリーBWSは役割を果たせず機能不全に終わった。設立から5年後の22年7月、サントリーBWSと傘下の4事業会社が経営統合し、新生・サントリーとして再出発を余儀なくされた。

 キリンHDも、13年に国内3事業会社を束ねる中間持株会社のキリンを設立したものの、6年後の19年7月に廃止した。

 サントリーHDもキリンHDも中間持株会社の寿命は5~6年程度と短命で、ビール業界では“負の歴史”といってよい。今、その歴史に挑戦しているのが、アサヒグループホールディングス(GHD)だ。

 キリンHDやサントリーHDから“周回遅れ”となる22年1月、国内中間持株会社のアサヒグループジャパン(GJ)を設立し、国内事業会社のアサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品を傘下に置いた。

 アサヒGJの設立は、国内事業価値の最大化が目的だ。また、アサヒGHDは欧州、豪州などエリアごとに置いた「地域統括会社」の機能を強化しており、その流れもあって日本にアサヒGJが設立された。

 しかし、アサヒGJの掲げる目的は、サントリーBWSやキリンも設立当初に強調していたものだ。にもかかわらず、中間持株会社は廃止に追い込まれている。

 アサヒGJの設立から1年が経過した今、“勝算”は見えたのか。

 次ページでは、社長や関係者への取材を基に、サントリーBWSとキリンが失敗した要因を分析するとともに、アサヒGJの勝算を探る。また、23年1月よりアサヒGJ内で始動した「特殊部隊」についても明らかする。