「グレタさん一時拘束」事件で危機感、“活動家”軽んじる日本と世界の温度差環境活動家のグレタさんがドイツで警察に一時拘束された Photo:dpa/JIJI

世界では「Activist」(アクティビスト。活動家)は、立派な肩書であり、その影響力は近年大きくなっている。一方、日本におけるそれらへの認識は、世界標準に比べるとやや遅れている。このままだと、グローバルに活躍したい企業やビジネスパーソンの判断が、曇ってしまうことになりかねない。活動家の社会的立場・役割について最新事情を踏まえて考えていこう。(著述家/国際公共政策博士 山中俊之)

「Activist」(活動家)の位置づけは
日本と世界標準では大きく違う

 環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが1月中旬、ドイツ西部の炭鉱をめぐる抗議活動で警察に一時拘束された。すぐに釈放されたものの、世界的に著名な活動家が、ドイツという表現の自由が保障されている国で拘束されたニュースは、瞬く間に世界を駆け巡った。

 ところがこのニュース、日本のメディアの扱いは、海外のそれに比べて小さかったように筆者は感じる。

 グレタさんは国際会議の場にも度々登場し、国際機関の要人との会話や発言が注目されている。20歳の若者の発言が世界的注目を集める例は、スポーツ選手や芸能人を除くとまれであろう。

 世界では「Activist」(アクティビスト。活動家)は、その人を支持するかどうかは別にしても、立派な肩書であり、その影響力は近年大きくなっている。CNNやBBCでも、Activistの肩書で多くの人物が登場している。

 振り返ると2022年は、環境活動家の一部が世界的な名画を汚す破損行為をして物議をかもした。詳しくは筆者が既述した『ゴッホ「ひまわり」にスープ、モネにはポテト…名画を攻撃“エコテロリスト”の正体』を一読してほしい。器物破損行為は刑法上の犯罪であり、もちろん非難されるべきだが、こうした活動家の行為に対する社会的な注目度が高まっているのは事実である。

 訳あって筆者は現在、オーストリアのウィーンに滞在している。ベルヴェデーレ宮殿オーストリア絵画館にて、世界的な名画であるクリムトの「接吻」を見たのだが、絵画の前では多くの人々が写真を撮っていた。接吻(せっぷん)をしながら自撮りをしているカップルもいた。

 そんなほほえましい光景を目の前に、「もし、環境活動家がこの絵に何か危害を加えたら、やはり嫌だなあ」と思いながら鑑賞していた。

 筆者の感触では、オーストリア絵画館の警備が特に厳しくなった様子はなかった。もっとも、各国の美術館では今、エコテロリストなどの過激な活動家への対策が欠かせなくなっているという。

 やや話がそれてしまったが、本題に戻ろう。世界では活動家の存在意義が高まっている一方、日本において活動家の肩書だけで活躍している人はほとんどいない。日本では弁護士や大学教授、NPO法人代表といった肩書とともに語られることはあっても、活動家というだけではなかなか評価されにくい。

 日本における活動家や、諸々の活動に対する認識は、世界標準に比べるとやや遅れているというか、軽んじられているように思う。このままだと、世界で事業展開する企業やグローバルに活躍したいビジネスパーソンの判断が、曇ってしまうことになりかねない。

 そこで本コラムでは、世界で影響力を強める活動家の社会的立場・役割について、また、日本企業やビジネスパーソンがどのように対応すべきかを考えていこう。