言葉の構成要素から
意味の手がかりをつかむ

 知らない漢字を見たとき、読めないけれど「魚へん」なので何かの魚を表す漢字なのだろうと、想像することはありませんか? そのような感覚です。

 ほかにも、「非常識」「無関心」「不注意」といった日本語のように、「非」「無」「不」が最初に付くと何かを否定している、というようにそれ自体の意味はわからずとも、漢字や言葉の構成から意味を何となく把握していることは、日本語でもよくあるかと思います。

 一方、英語では、アルファベットそのものは漢字の部首のように意味を示すことはありませんが、“pneum”のように特定の意味を持つような、言葉の構成要素があることを知っておくと、英語でのコミュニケーション中に知らない言葉に出くわしたとき、文脈を理解する手がかりになります。

 先日も、通訳をしていたときに本題のテーマとは関係なく、“osteoporosis”(骨粗しょう症)に悩まされる人の話題になりました。

 体の部位や病気に関わる言葉は専門的なので、突然会話に出てくるととっさに思い出せないことも多いのですが、そのようなときは、先ほどのように言葉の構成要素を手がかりにします。

 たとえば、“osteoporosis”の“osteo”は骨に関する言葉に付く接頭辞なので、この英単語の意味を知らなくても、“osteo”で始まる言葉は「骨に関すること」である、そして文脈から「何かの病について話している」と見当をつけることができます。

 仮に「骨粗しょう症」という言葉を思いつかなくても、このようにして「骨に関する病」と抽象度を上げて訳すことで、その場をしのぐことはできます。

 同時通訳というのは、わからない言葉が出てきても話を止めるわけにはいかないので、ズバリと正確な訳語が出てこなくても通訳するしかありません。その際に少しでも適切な言葉を選ぶために、接頭辞のような手がかりは重要です。

知っておくと日常会話に役立つ
英語の接頭辞

 このほかにも、心臓に関する“cardio”や、筋肉に関する“musculo”のように、体の部位に関する接頭辞はいくつかあります。もちろん接頭辞は体の部位に限りません。日常会話に出てくるような言葉で、いくつか挙げてみましょう。

cent……「100」という意味を持ちます。たとえば“century”は1世紀、つまり100年のこと。また、アメリカの貨幣単位の「1セント」は、1ドルの「100分の1」です。

bi……「2つ」という意味を持ちます。たとえば“bilingual”は2カ国語を話す人のことです。“bike”は、車輪が2つ付いた乗り物を表しています。

multi……「複数の」という意味を持ちます。たとえば“multitalented”はいくつものことに長けている多才な人のことです。“multitask”は、一度に並行して複数のことをこなすことを言ったりしますよね。

re……「再び」という意味を持ちます。たとえば“return”は元にいた場所に再び戻ることです。一度伝えたことを再び伝えることは“remind”と言いますね。昨今よく話題になる環境についても、“recycle”“reuse”など、この接頭辞が付いている言葉がよく使われますが、使用したものを廃棄するのではなく、「再び」利用したり材料として活用したりするということですね。

 いかがでしたでしょうか。知らない英単語が出てきたときの対処法にはさまざまな方法がありますが、今回はその中から、「言葉の構成要素から意味の手がかりをつかむ方法」をご紹介しました。英語でのコミュニケーションの際に、ぜひ意識してみてください。