一段と拡充され、
使い勝手が高まったIT導入補助金

 2017年にスタートしたIT導入補助金は、「通常枠」に加えて22年度から「デジタル化基盤導入枠」と「セキュリティ対策推進枠」が新設され、中小企業のデジタル化対応支援がさらに強化された。

 22年度補正予算の成立で、23年度もIT導入補充金制度が継続されることが決まった。一部補助の下限額が引き下げられたり、撤廃されたりするなど、使い勝手もより高まっている。

 通常枠は、幅広いソフトウェア導入などに利用できるもので、ソフトウェア購入やクラウド利用に関する費用が対象となる。クラウド利用料に関しては従来1年分が補助対象だったが、23年度は2年分に期間が延長される。業務工程や業務種別の数に応じて「A類型」と「B類型」があり、補助額はA類型が5万〜150万円未満、B類型が150万〜450万円以下。補助率は2分の1(総費用の半額)以内となっている。

 デジタル化基盤導入枠は、10月から始まるインボイス制度への対応を見据えたもので、「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」がある。前者のデジタル化基盤導入類型は、ソフトウェア購入やクラウド利用に加えて、パソコン・タブレットやPOSレジなどハードウェア購入費も対象となる。ソフトウェアとクラウドは、通常枠と違って会計・受発注・決済・ECソフトに限定されるが、補助率は4分の3以内または3分の2以内と通常枠に比べて高く設定されている。ハードウェア購入費の補助率は2分の1以内で、補助額の上限はパソコン・タブレットなどが10万円、レジ・券売機などが20万円だ。

 後者の複数社連携IT導入類型とは、10者以上のグループで申請するもので、商工団体や複数の事業者で形成されるコンソーシアムなどが想定されている。たとえば、商店街でカメラを設置して来街者の行動履歴やPOSレジの購買データを関連分析する、地域通貨を発行して販売促進を図るといったケース。あるいは、サプライチェーンを形成する事業者間でインボイス制度に対応した受発注・決済のネットワークを構築するといった場合の費用などが補助対象となる。

 通常枠とデジタル化基盤導入枠では、ソフトウェアやクラウドの導入だけでなく、それらの定着までを見据え、コンサルタントやITベンダーなどに依頼する導入計画作成費用、導入後の研修費用なども補助対象に含まれる。

 そして、昨今増加の一途をたどるサイバー攻撃への対策として設けられたのが、セキュリティ対策推進枠で、情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスのうち、IT導入補助金事業においてIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録されたものが対象となる。サイバーセキュリティサービス利用料の最大2年分が補助される。

 23年度のIT導入補助金については、3月末日から順次、申請の受け付けが始まる見込み。IT導入補助金事務局のウェブサイトを確認したり、IT導入支援事業者などに相談したりしながら、うまく活用していきたい。