節操なき薬学部新設ラッシュに、ついに大なたが振るわれる。文部科学省が薬学部の新設・定員増を抑制する方針を固めたのだ。定員割れ、国家試験合格率の低迷、留年率や退学率の高い大学には助成金の減額や不交付もあり得る。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#2では、独自の「薬学部淘汰危険度ランキング」で、淘汰リスクの高い薬学部、生き残る薬学部を明らかにした。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
不人気で留年・退学が多く、国試合格率は低迷
淘汰危険度ランキング上位の薬学部をランキング
節操なき薬学部新設に、ついに大なたが振るわれることとなった。
文部科学省は1月25日、2025年度から薬学部の新設や定員増を抑制する方針を盛り込んだ、大学等の設置認可基準を改正する告示案を、中央教育審議会大学分科会に提出。これが了承されたため25年以降、薬剤師が不足する地域を例外として、薬学部の新設や定員増は原則的にできなくなる。
薬学部の定員はこれまで、医学部や歯学部とは異なり制限がなく、学校教育法と大学設置基準に合致すれば認可されてきた。05年度に61大学62学部だった薬学部は、06年度の6年制導入を経て、21年度は77大学79学部に。特に私立大学で顕著に増え、44大学45学部だったものが58大学60学部になった。
少子化が進むにもかかわらず際限なく新設や定員増を行った結果、案の定、私立大学で定員割れの薬学部が続出した。学生が集まらなければおのずと入試は易しくなり、入学してくる学生のレベルは下がる。その影響は、卒業率や薬剤師国家試験の成績にも如実に表れ始めた。
その上、薬剤師が余る。団塊の世代が後期高齢者となる25年以降は本格的な人口減少時代に突入する。21年に厚生労働省が公表した推計では、45年に薬剤師は最大で12万6000人、少なく見積もっても2万4000人が過剰となる見通しだ。
定員割れ、国家試験合格率の低迷、高い留年・退学率。そして近未来の薬剤師余りという厳しい現実を前に、ついに国も重い腰を上げ、薬学部の制限に乗り出したというわけだ。
前述した大学の設置認可基準改正案の基になっている「6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ」には、学生集めに苦労する薬学部が戦慄するような、かなり踏み込んだ表現が盛り込まれた。
「実質競争倍率や入学定員充足率、標準修業年限内の卒業率・国家試験合格率、退学等の割合が一定水準を下回り、教育の質に課題があると考えられる大学に対して適切な入学者選抜の実施及び入学定員の適正化を強く要請すべきである」
「私学助成について、定員未充足の大学に対する減額率の引き上げや不交付の厳格化などメリハリある財政支援等により、より一層の入学定員の適正化を求めていく必要がある」
つまり文科省は、標準修業年限内(在学6年間)での卒業率・国家試験合格率が低く、学生が集まらない大学は、今後私学助成金の減額・不交付も辞さない構えということだ。
そんな中で生き残る大学、そして淘汰リスクの高い大学はどこか。文科省が公表したとりまとめで薬学部の質として言及されている、標準修業年限内の卒業率と薬剤師国家試験合格率、そして入学定員充足率の3指標を用い、「全国薬学部淘汰危険度ランキング」を作成した。