なお本記事では、病気としての癌の表記として漢字の「癌」を充てる一方、「がん保険」への言及では「がん」を充てる。保険会社は癌が恐ろしい病気ではないというイメージを醸し出したいのだろうと推察して、その慣行を尊重する。
患者になってみた実感としても、文章の字面としても、癌一般には「癌」が適切だと強く思う。ひらがなの「がん」は間抜けだし、それで病気が軽くなるわけでもない。
癌患者としての筆者の条件
筆者の癌治療の概要を簡単に説明する。
癌が見つかったのは昨年の夏だ。ある大学病院を選んで治療することにした。手術で病変部分を取り切れると見込まれる食道癌の現在の標準治療は、先に抗癌剤治療を二度程度入院して行い、その後に手術を行うものだ。筆者は、つごう三度、合計40日程度入院した。
手術を受けたのは昨年の10月下旬で、術後13日で退院した。治療の進歩とともに厚生労働省の方針もあってか、入院は意外に短かった。
現在、手術後3カ月と少々が経過し、再発防止のための投薬治療を続けている。幸い、概ね順調な回復過程をたどっていて、先般の術後3カ月目のCT(コンピュータ断層撮影)検査では再発・転移は見つかっていない。
筆者は発病時も現在も満64歳で、証券会社の社員であり、東京証券業健康保険組合に加入している。民間保険会社のがん保険には一切入っていなかった。さて、筆者の癌に治療費はいくらかかったのだろうか?