医師の問診のイメージ写真Photo:PIXTA

実は、筆者は今年がんにかかった。それを受けてあれこれ考え、幾つか決断を迫られてみると、がん患者の状況は、投資の初心者が直面する問題とよく似ているのではないかと思った。今回気付いた、それぞれに共通する大事なことについてお伝えしたい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

がん患者初心者になって
初めて分かったこと

 2022年最後の記事である。筆者自身にとっての今年を振り返って、気付いたことを書いてみたい。内容が私事にわたるが、ご容赦いただきたい。

 実は、筆者は今年がんにかかった。まず、以下に事実の経緯を簡単に書く。筆者の現状に差し迫った深刻さはないので、「年末に不景気な話など聞きたくない!」と思わずに読んでいただけたら幸いだ。

 今年の7月ごろに、筆者は喉の不調を覚えて耳鼻科を受診した。内視鏡で見ても喉に問題はなかった。しかし、その後違和感が解消しないので、自宅近くの胃腸病院で内視鏡検査を行ったところ、8月に食道がんが発見された。

「食道がんは、大学病院クラスの病院でないと手に負えない」と言われて、大学病院を紹介してもらい、9月、10月に一度ずつ抗がん剤投与のために入院し、その後10月の末に手術を受けるために三度目の入院となった。がんは、粘膜・筋膜層にとどまる初期ではないが、手術で取り切れると主治医が判断する進行度合いだった。現在の食道がんの標準的な治療方針は、先に抗がん剤治療を行ってから手術ないし放射線治療の手順である。

 幸い、手術後の経過は順調で、術後13日目に退院して、当面は一月に1、2度程度の通院で再発予防のための投薬を行いつつ、現在は自宅で仕事も含めて概ね普通に生活している。