健康保険の保障は手厚い
ここまでのところ、個室代の160万円を筆者の個人的贅沢として考えて除外すると、健康保険でカバーされなかった「どうしても必要だった」医療費の支払いは、手術の入院が終わって治療が一段落した段階で十数万円だった(75万円マイナス61万円は14万円だ)ということになる。
今後の医療費はどうなるか。筆者は主治医と相談して、再発防止のための薬剤投与を行うことにした。毎月一回、1年間である。その他に、定期的に検査があったり、飲み薬の処方があったりするが、大きな金額ではない。
高価な薬だが、毎月の窓口の支払いは、保険適用部分が12万円に、時間を予約して診療できる仕組みの利用料が1万円の合計で13万円見当の予定だ。そして、12万円の方は健康保険組合の給付金を考えると負担が2万円に減る。結局、1カ月当たり3万円を1年間負担することになると見込んでいる。
改めて計算してみて、そもそものわが国の健康保険制度および健康保険組合(筆者の場合は東京証券業健康保険組合)の付加的な給付制度が、こんなに手厚いものなのかと感心する。
証券会社のサラリーマンである筆者の場合、どうしても必要な医療費支出は煎じ詰めると十数万円だった。本人の収入によって負担額が変わるが、国民健康保険の高額療養費制度までが負担の上限額になるフリーランスの場合も、筆者程度の癌にかかった場合の負担額は数十万円の単位だろう。「治療費が足りなくなる心配」だという理由からがん保険に加入する必要性はない場合が多いだろう。
読者は何らかの健康保険に加入しているに違いない。ならば、少々余裕を見るとして自由になる預金が200万円か300万円くらいあれば、入院の条件などをその都度考えるとして、健康保険が適用される標準的な治療を行う限り、がん保険に入っていなければ癌の治療費が払えないという事態はまずないだろう。
がん保険の保険料を毎月支払うよりも、預金なり積立投資なりで早く何百万円かの備えを作ることを考えた方がいいと筆者は思う。老後の生活に備えた蓄えの形成も必要なのだから、同時に行うといい。