コンセプトが異なる2つの店舗
黒い看板の吉野家では「お牛丼」が食べられる

 オレンジの看板の吉野家がいわゆる昔からずっと存在する吉野家で、黒い看板の吉野家が私の担当者が気になったというおしゃれな吉野家。この2つは店舗コンセプトが異なります。

 例えば首都圏の不動産人気ナンバーワンの恵比寿駅には「吉野家恵比寿駅前店」と、「吉野家恵比寿駅東口店」があります。東口店はオレンジの看板の吉野家で、食べログの点数は3.01です。しかし、駅の反対側の代官山方面にある恵比寿駅前店は黒い看板の吉野家で、食べログの点数は3.19と同じ吉野家なのに評価が異なります。

 ちょっとだけ誇張して説明すると、前者が私のような忙しい男性ビジネスパーソンが来店して牛丼を注文し、5分で食べ終わって退店するタイプの吉野家。そして後者が代官山近辺にお住まいのお嬢様が友人と来店して、パプリカやれんこん、ブロッコリーなどがのった「お牛丼」をご注文されて、1時間ぐらい昼下がりのトークを楽しんでから退店するお店。

 このように、そもそもの設計思想が異なる2種類の吉野家が全国に存在しているのです。

 カフェスタイルで小ぎれいで、女性や家族連れも気軽に来店できて、カウンター席にはスマホが充電できるコンセントがあって、ドリンクバーもあって長居ができる。これが新しいタイプの黒い吉野家です。

 吉野家ではこの黒い看板の吉野家を「クッキング&コンフォート」という店舗業態名で呼んでいます。ネーミングから類推できるように限定調理メニューが存在し、かつドリンクバーやデザートのアイスが売っていて居心地がいい。

 吉野家は全国に1649店舗あるのですが、そのうちの約15%に相当する239店舗がクッキング&コンフォートの業態になります。

 ではこの黒い看板の吉野家業態は、戦略的にはどのような意味があるのでしょうか。