2022年4月から義務化されたアスベストの事前調査
マンションの大規模修繕工事も対象に
アスベストによる健康被害を重く見た日本政府は、健康被害者救済のための法制定や補償制度の整備など、さまざまなアスベスト対策に取り組んできた。アスベストの取り扱いについては、その使用を段階的に禁止し、2006年9月には、改正労働安全衛生法の施行によって、石綿、および石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、新たな使用を禁止した。そして、12年には禁止が猶予されていた製品も含め、全面的に使用禁止となっている。
この規制により、今後新たにアスベストが使用されることはなくなったが、気をつけなければならないのは、それ以前はアスベストを含んだ建材が使われていたという点である。つまり、06年8月31日以前に着工した建物には、アスベスト含有建材が使用されている可能性があるということだ。
ただ、断熱材や防音材にアスベストが含まれていても、製品の状態でアスベストが飛散することはない。現時点でアスベスト含有建材を使用した建物に住んでいるとしても、建材によって健康被害を起こすことはないので、その点を不安視する必要はないだろう。
問題は、建物の解体や改造、補修といった工事の際に、建材に含まれているアスベストが周囲に飛散してしまう危険があることだ。
こうした危険性を考慮して、20年に大気汚染防止法と石綿障害予防規則等が改正され、アスベスト対策の規制がより強化されている。その一環として、22年4月1日からは、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、一定規模以上の解体、改造、補修工事について、アスベスト含有建材の有無にかかわらず、事前調査の結果を報告することが義務付けられた。
事前調査結果の報告対象となる工事は、以下のように定められている。
・建築物の解体工事:解体作業対象の床面積の合計80平方メートル以上
・建築物の改修工事:請負代金の合計額100万円以上(税込)
・工作物の解体・改修工事:請負代金の合計額100万円以上(税込)
この報告対象には個人宅のリフォームや解体工事なども含まれており、マンションの大規模修繕工事はほぼ確実にこの対象となる。
06年9月以降に工事着手したマンションの場合、すでにアスベストの使用が禁止されているため、工事の着工日や使用建材の製造日を文書などで確認することで、事前調査とすることができる。しかし、それ以前に建てられたマンションはアスベストの事前調査が必須となる。06年までに建設された分譲マンションは全国に約485万戸あり、相当な数のマンションが該当することになるわけだ。