会社人間から
仕事人間へ

 筆者はこのコラムでも度々、「50代のサラリーマンは成仏すべし」ということを主張してきた。ここで言う「成仏」とは会社の中での地位や立場にこだわるのではなく、気持ちを切り替えて会社を退職した後に向けた準備をすべきだということである。

 ただ、「成仏すべし」といってもそれは仕事を適当にやって、手を抜くということではない。象徴的な言葉で言うと、「会社人間」は早く卒業して「仕事人間」になろうということだ。

 前述したように仮に70歳まで、あるいは70歳を過ぎても働こうと考えたとしても会社に残って再雇用で働く場合、その多くは65歳までが限界となる。したがって、それ以降も働こうとすると転職するか、あるいは自分でフリーランスとして仕事をすることになるだろう。

 実はそのために最も重要なことが、今の仕事を頑張ることなのだ。これは意外に思うかもしれないだろう。「成仏しろ」と言いながら「今の仕事を頑張れ」というのは何だか矛盾しているのではないかと言われるかもしれない。ところが、これは事実なのだ。

 多くの人は「仕事を頑張る」のは今の会社で昇格することを念頭に置いているはずだ。したがって50代になって役職定年を迎えたり、昇格の見込みがなくなったりすると「頑張っても仕方ない」と思ってしまうのだ。ところが、ここで発想を変えるべきなのだ。出世するためではなく、自分の専門性を磨くために今の仕事を頑張ることが重要なのである。なぜなら、これは定年後にシニアが転職する際に極めて重要になってくることだからだ。