相手の話を遮って引き出す
「カット・イン」のテクニック

 コンピテンシーを見極めようとする際に、重要な注意点がある。それは、先にエピソードありき。それをコンピテンシーに仕分けるということだ。逆のやり方をすると、かならず失敗する。

×「あなたは戦略的ですか?」
×「戦略思考を示すエピソードを話してください」

 このように尋ねれば、相手は必ずそれに合わせてそれなりの話をしてくる。

 これはあたかも、初めてのデートで、「あなたは誠実?」「それを示す事例を出して!」と聞くようなものだ。普通はドン引きされる。時には作り話すら話し始めるかもしれない。

 エピソードからコンピテンシーを評価するための、より具体的なアプローチは、まず相手が答えた「自慢話」のうち、知りたいコンピテンシーに関わる物が出てきた際に、話を少し遮って、次のような質問を重ねて深掘りしていくことである。

○「ちょっとそこ、もう少し教えていただけますか?」
○「具体的にはどうやったのですか?」

 カット・インというテクニックだが、これを失礼だと考える人は意外と多い。

 しかし、タイミングを逃すと相手の思考が乱れ、ひいては、核心に迫るチャンスを失う。失礼を恐れずにどんどん割り込んだほうが絶対に良いインタビューになる。

書影『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』(フォレスト出版)
小野壮彦 著

「あなたは、そこで何をしたのですか?」「あなたが、その成功のために工夫したことはなんですか?」と、バンバン切り込んでいって、主体的な関与の姿をあぶり出すべきである。ただし、尋問風になってはいけない。あくまでも好奇心のおもむくままに、盛り上がりながら差し込むべきだ。

 人の能力を「コンピテンシー」として、しっかりと見極める技が身につくと、スポーツ選手、料理人、芸術家、芸人など、ネクタイを締めない職業においても、なぜその方がプロフェッショナルとして成功したのか、立体的にわかってくるようになる。

 そこまでくればしめたものだ。

 恋愛においても、相手の能力を理解し、足りないところを補い、それを感謝とともに伝え合えるような素敵な関係へと、発展させることができるのではないだろうか。