「旬の催事や食材が一目でわかってとてもいい」「一家に1冊あるといい」「イラストがかわいい」と大好評の書籍『旬のカレンダー』。本書では、ひと月ごとに、その季節を感じさせる旬の食材や菓子、花、行事・レジャー、家事などを、鮮やかなイラストを中心に紹介していきます。歳時記のような書籍はほかにもあるのに何が好評を得ているカギなのか、また実際に読者の方からどのような反響があるのかなど、担当編集者の長久恵理さん(ダイヤモンド社書籍編集局)に聞きました。(書籍オンライン編集部)

「よその家」ではどうしているの? 意外と知らない家庭で教わること

――現在7刷5万5000部のベストセラー書籍『旬のカレンダー』編集担当の長久さんは以前企画された『育ちがいい人だけが知っていること』もシリーズ66万部突破と大好評で、女性向けの書籍を得意とされています。『旬のカレンダー』の企画はどのようにスタートしたのですか?

「よその家」ではどうしているの? 意外と知らない家庭で教わること『旬のカレンダー』(旬の暮らしをたのしむ会、ダイヤモンド社、2022年)

『育ちがいい人だけが知っていること』『旬のカレンダ―』をつくる一つのきっかけになりました。

というのも、『育ちがいい人だけが知っていること』を刊行後、多くの方から様々な反響をいただいたなかで改めて感じたのが、「よその家庭で教えていることは、意外と知る機会がないので、気になるものだな」という点でした。

『育ちがいい人だけが知っていること』は、立ち居ふるまいや、基本的なマナー、お付き合いの常識など、幼少期に家庭で教わり、なんとなく身についたようなことを、改めて学び直すような内容です。

けれど、「育ちの良さ」って、外での立ち居ふるまいだけではなく、どんな家に住んで、どんなものを食べて、家族でどんなことをしているのかといった家での暮らしぶり、生活習慣のようなものも入りますよね。たとえば、

・生活にどのくらい年中行事を取り入れているのか?
・季節の花は飾っているものか?
・たけのこごはんや、冷やし中華は、その季節になったらちゃんと食卓に並ぶのか?
・お盆に、お墓参りをするのか?
・衣替えはいつして、日々の家事はいつ、どのくらいしているのか?

……そんな、ほかのみなさんの家ではどうしているのか、知ることができる本があったらいいなと思い、この『旬のカレンダー』を企画しました。

ですから、ひと昔前であれば、祖母や母のお手伝いをしていたら自然に身についていたような、スーパーでの食材の選び方や、手土産の選び方、おつきあいの心得など、昔ながらの暮らしの知恵のようなものが、本書のテーマになっています。

――『旬のカレンダー』は、野菜、魚介、料理、和菓子、洋菓子、レジャー・行事、家しごと、神社、お墓参りなど、各ジャンルの専門家が監修されて、きちんとした内容が詰まっていますが、なんといっても、かわいいイラストがふんだんに使われているのが魅力です。「見ているだけでも楽しい」という感想も多く寄せられていますね。イラストについては当初から、長久さんも非常に気を使って細かくディレクションされていた印象です。

「家庭での暮らしぶり」は、季節を通して見せていくと、わかりやすく取り入れやすいと思いました。

ひと月ごとに、その時期の「旬のもの、こと」を紹介し、イラストを見るだけで季節の移り変わりを感じられるといいなと。

「よその家」ではどうしているの? 意外と知らない家庭で教わること「よその家」ではどうしているの? 意外と知らない家庭で教わること

8名のイラストレーターさんにお願いしましたが、どの方も、本当に丁寧で本物そっくりでありながら、色みや構図にどこか今っぽさや、新しさを感じる素晴らしいイラストを描いてくださいました。

イラストに魅力があると、見るだけで、持っているだけでうれしい本になりますし、懐かしいだけではなく、「今」の価値観が反映されている、ということがイラストを見るだけで何となくわかるので、今更?と思わず、手にとっていただけていると思います。

――掲載する「旬のもの」もかなり慎重に取捨選択されていましたね。

「よその家」ではどうしているの? 意外と知らない家庭で教わること長久恵理(ながひさ・えり)
ダイヤモンド社 書籍編集局第2編集部所属。大学卒業後、他の出版社を経て2018年入社。担当書籍は『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』『「育ちがいい人」だけが知っていること』『もっと!「育ちがいい人」だけが知っていること』『旬のカレンダー』など。

この本は一見、歳時記のように見えますが、テーマは「家庭で教わる、暮らしのこと」ですから、ただ「旬のもの」や昔ながらのことだけを掲載しているだけの本にならないように注意しました。

例えば一般的に、歳時記に家事は含まれないですよね。あるいは、昔ながらの四季の本であれば、3月の花に桃は入っても、ミモザは入れないだろうと思います。

でも最近は、インスタグラムなどで春にミモザはとても人気がありますし、花のアレンジで生けるのではなく、グリーンだけ、枝物1種類だけをラフに生けるのが流行っているなど、どんな花をどんなふうに飾るかにも流行があります。

もちろん、昔ながらのことも知りたいですけど、家庭ってそのときどきの流行や価値観が自然と反映されているものですよね。

たとえば、昔はこどもの日に鯉のぼりを上げる家がありましたが、今は非常に少なくなっています。

ほかにも、最近はホワイトデーのお返しに「キャンディー=好き」「マカロン=特別」「クッキーは友達」「マシュマロ=嫌い」という意味があるんだとか。お子さんのいるライターさんに伺った話なのですが、面白いなと思いました。

そういった小話も、家庭でママやおばあちゃんが孫に教えてもらう会話のように、へぇ~と思って楽しめます。1人の大人の女性が常識的に知りたいことであるのはもちろん、子どもも、おばあちゃんも、家族三世代で一緒に楽しめること、という視点で、項目や内容は選びました。