全国で約850万基あるといわれるマンホール内の設備として、なくてはならないのが排水をスムーズに流すための流路、インバートだ。従来、インバート施工には、左官職人の熟練の技が必須だったが、その施工法を画期的に変えた商品が、岐阜県可児市のアイビージャパンが提供する「インバルブロック」だ。(取材・文/大沢玲子)
インバート施工とは、マンホール底部に流路として半円形の溝をコンクリートとモルタルで作り上げるもの。ただし「従来の工法にはさまざまな課題がありました」。同社代表取締役の前山勝彦氏はそう語る。実はマンホールは、設置された場所の地形によっても、汚水の流入・流出口の角度、配管経が異なる。現場で状況を見ながら、コンクリートやモルタルを流し込み、こてでならしながら流路を成形していくのは、熟練の左官職人でも困難な作業だという。
さらに狭いマンホールの底で足場を確保する手間や、コンクリートが乾燥するまでの待機時間など、作業も長引きがち。既存マンホールの流路補修の場合は、流水を止めないよう、別途汚水を流すバイパス工事が必要となり、「その分、工期が増えてしまうのも課題でした」(前山氏)。
左官職人の減少による
人員確保の問題にも対応
同社は1985年にインバート施工業者として創業。インバート施工を請け負う中で、自らこうした課題を解決すべく、インバート流路部分をあらかじめコンクリートで工場生産する「インバルブロック」を開発する。
95年に特許・登録商標を取得し、販売開始。翌年には国土交通省の下水道一般工事関連新技術としてNETISに登録される。
ありそうでなかった商品として高い技術的評価を得て、設置実績は全国で9万基、苦情ゼロを誇る。では、同商品の優位性はどこにあるのか。