限られたマンション用地の争奪戦が激化し、土地仕入れコストが高騰している。不動産バブル崩壊の恐怖感を抱く大手マンションデベロッパーは、したたかに戦術を転換中だ。特集『「マンション&戸建て」購入術大全』(全9回)の#3では、マンデベの最新の事業戦略を明らかにする。さらに“割高”な新築マンションがこの10年間でどう変わったのか駅別に分かる「新築マンションPER」マップも公開する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮、宮原啓彰)
用地争奪戦の激化で
土地仕入れコストが上昇
「今がバブルだというのは、うすうす感じている。それでも、不動産価格が上がり続けると信じるしかない」。首都圏でマンション開発を手掛けるインフラ系企業を母体とする中堅不動産会社の幹部は、自らを納得させるように独りごちた。
不動産経済研究所によると、2022年の首都圏の新築マンション平均価格は6288万円で、2年連続で過去最高を更新。バブル経済だった1990年の価格水準をすでに上回り、文字通り「バブル超え」の市況となっている。
マンション価格が高騰する要因の一つは、限られたマンション用地を巡る争奪戦が激化したことにより、土地の仕入れコストが上昇していることにある。
特に土地を高く売りたい地主など売り主の思惑が、大きく影響している。買い手である不動産会社などと個別に価格交渉する「相対取引」ではなく、より高く売れる見込みがある「一般競争入札」に持ち込む売り主が増えたのだ。
売り主たちの狙いは、当たった。一般競争入札では、応札する買い手が数十社に上ることもあり、売却価格がどんどんつり上がった。そのため、相場の実態と懸け離れた無謀な価格で落札するケースも散見されるようになったのだ。まさにバブル状態なのである。
バブルはいつかはじける──。前出の中堅不動産会社の幹部も、そんなことは百も承知だ。しかし、マンションを開発して販売する不動産会社は、そもそも土地を仕入れなければ商売にならない。
この幹部は「後発組ともいえるわれわれは、バブルのような局面でしか土地を仕入れることができない。平時なら、大手マンションデベロッパーがかっさらっていくから。明らかにババを引くと分かっていても、突っ込むしかないんです」と本音を吐露する。
では、土地の仕入れコストが高騰する中、メジャー7(三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京)を中心とした大手マンションデベロッパーは、どのようにしてマンション用地を獲得しているのか。
不動産バブル崩壊への恐怖感を抱え、各社は確実にリターンの得られる戦術にシフトしている。次ページでは、メジャー7の事業戦略を解き明かす。