早期退職は厳しいSさん
60歳での引退はアリ?
最後に、60歳まで仕事を続けた場合を試算してみます。今回は便宜上、56歳まで働いて金融資産額を6440万円まで増やした後、住宅ローンを先に一括返済したタイミングから試算を再開します。
56~60歳の4年間は仕事を続けるので、年間収入は840万円のままです。年間支出は先ほどの500万円から、住宅ローンの返済額(月間15万8500円、年間190万2000円)を差し引いた309万8000円です。年間黒字額は差額の530万2000円ですが、切りが悪いので、便宜上530万円とします。
先ほどと同様、住宅ローンを完済した後の金融資産額は4350万円です。60歳までの4年間仕事を続けた場合の2120万円(530万円×4年間)が加わると、残高は6470万円に増えます。この金額が60歳時点の金融資産額です。
それ以降、年金受給が始まる65歳までの5年間は無収入です。前述の通り、年間支出は300万円ですから、この額がそのままま年間赤字額となり、5年間で1500万円の金融資産を取り崩します。6470万円から1500万円を取り崩すと、65歳時点の金融資産額は4970万円です。
Sさんが60歳まで働いた場合、受け取れる公的年金額は月間15万5000円、年間186万円程度になるはずです。手取り額を155万円とし、年間支出を300万円のままとすれば、年間の赤字額は145万円です。
65歳時点の金融資産額は4970万円ですから、毎年145万円取り崩すのであれば約34年後(Sさんが99歳)まで持ちこたえられます。
この金額だけでは人生100年時代に少しだけ足りませんが、今回は試算に含めなかった個人年金保険や企業型確定拠出年金の受給があることを踏まえると、ようやく安心できるラインといえるでしょう。
60歳で退職し、その時点で6470万円程度の金融資産があること。これがご質問の(1)(2)に対する回答です。
ご質問の(3)について補足すると、先ほど例示した項目は、あくまで仕事を辞めた後に節約すべきだと思われるものです。仕事をしている現在の状況や価値観は、もちろん退職後とは異なるでしょう。
今すぐ節約に着手したい場合は、Sさんが仕事を続けていく上で必要な支出を洗い出し、優先順位の低いものから削減するとよいと思います。