犯罪集団が行っている
電話を使った情報収集方法

 犯罪集団の情報収集の一つとして、最も知られている手法が電話である。

 例えば高齢者宅への次のような電話だ。

「警視庁XX署の生活安全課のものですが、最近特殊詐欺がはやっています。ご自宅にお一人住まいの場合は気を付けてください」

 これに対し、高齢者が「大丈夫です。近くに息子夫婦が住んでいますので」などと答えようものなら、犯罪集団に独居であることが推察されてしまう。

 注意すべきは、こうした直接的な質問だけではない。スパイ活動においては間接的な質問で情報収集することが多いが、犯罪集団も似ている面がある。

 犯罪集団が行う情報収集には、例えば「広域アンケート」と称し、自動音声でガイダンスに従って番号を押すように促すような手法がある。

 高齢者宅に、自動音声で「電気料金に関するアンケート」の電話がかかり、「1カ月の電気代が5000円未満の方は“1”を、5000円以上の方は“2”を押してください」などと言われて、高齢者が“1“を押下してしまえば、即座に一人暮らしと把握されてしまうだろう(総務省「2021年度家計調査―単身世帯―」によれば、一人暮らしの電気代の平均は一カ月5482円)。

 こうした手法については、特殊詐欺が猛威を振るった1999年以降、「母さんオレだよ」のオレオレ詐欺からその手法を進化させていった。

 オレオレ詐欺の頃は、だますという「実行行為」は電話のみで行われていたが、現在は、実行行為の効率性を上げるために、まずターゲットの情報を引き出す手段として電話を活用する手法に変化してきている(この情報を引き出す行為自体も含んで実行行為とするという点は割愛する)。

 また、電話口での高齢者らの反応が犯罪集団にチェックされていることにも留意しなければならない。犯罪集団が作る「闇名簿」には、高齢者らの口調や性格、警戒心の高さなども備考として記され、犯罪を行う上での貴重な情報となっている。